第3話 逃避行
コンビニのレジ、お金の入った募金箱を盗んで二人で逃げた。
逃げる時キミはいつも笑顔で、二人でなら僕はどこにでもいける気がした。
今更怖いものなんて僕らにはなかったんだ。
走って垂れる額の汗も、さっき落とした僕のメガネも今となっちゃどうでも良くて、僕にとっては幸せな時間だった。
キミが笑っていて一緒に僕が笑っている、それだけで良かった。
「メガネ落ちたけど大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。僕そこまで目は悪くないから」
「それなら良かった」
「僕らあぶれ者の小さな逃避行の旅だ、いっそのこと楽しんだ方が良いよ!」
「うん!」
暫く歩いていると、僕はふと思い出した。
いつか読んだ漫画の主人公。
彼は勇者で、誰にも好かれるキャラクターだった。
「そんな主人公なら、汚くなった僕たちも見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな?」
「そんな夢なら捨てたよ、だって現実を見ろよ。『シアワセ』の四文字なんてなかった、今までの人生で思い知ったじゃないか。自分は何も悪くねえと誰もがきっと思ってる」
キミがきつく言っているように聞こえた。
でも僕はキミの言う通りだと思った。
何故なら虐めれているキミを助けようとしたのはあの学校で僕だけだった。
先生や生徒は誰一人キミを助けようなんてしなかった。
私は悪くない、俺は悪くないと言わんばかりの顔でキミを見てるだけだったからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます