第3話 逃避行

 コンビニのレジ、お金の入った募金箱を盗んで二人で逃げた。

 逃げる時キミはいつも笑顔で、二人でなら僕はどこにでもいける気がした。

 今更怖いものなんて僕らにはなかったんだ。

 走って垂れる額の汗も、さっき落とした僕のメガネも今となっちゃどうでも良くて、僕にとっては幸せな時間だった。

 キミが笑っていて一緒に僕が笑っている、それだけで良かった。

「メガネ落ちたけど大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。僕そこまで目は悪くないから」

「それなら良かった」

「僕らあぶれ者の小さな逃避行の旅だ、いっそのこと楽しんだ方が良いよ!」

「うん!」

 暫く歩いていると、僕はふと思い出した。

 いつか読んだ漫画の主人公。

 彼は勇者で、誰にも好かれるキャラクターだった。

「そんな主人公なら、汚くなった僕たちも見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな?」

「そんな夢なら捨てたよ、だって現実を見ろよ。『シアワセ』の四文字なんてなかった、今までの人生で思い知ったじゃないか。自分は何も悪くねえと誰もがきっと思ってる」

 キミがきつく言っているように聞こえた。

 でも僕はキミの言う通りだと思った。

 何故なら虐めれているキミを助けようとしたのはあの学校で僕だけだった。

 先生や生徒は誰一人キミを助けようなんてしなかった。

 私は悪くない、俺は悪くないと言わんばかりの顔でキミを見てるだけだったからだ。

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