第2話 狭い世界
この狭い狭いこの世界から、僕らは逃げ出した。
家族もクラスの奴らも全部捨ててキミと二人で。
「遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ」
「そうだね」
僕が言うと、キミは微笑んで返してくれた。
もうこの世界に価値のどない、僕はそう思った。
「元気だしなよ、人殺しなんてそこらじゅう湧いてるじゃんか」
「うん。それもそうだね」
暗い顔をするキミに声を掛けて、元気を出してくれると思っていた。
その時だって微笑んでうなずてくれたから。
キミは何も悪くないよ、キミは何も悪くないからね、と僕はずっと心の中でキミに勇気付けていた。
「結局僕ら、誰にも愛されたことなどなっかたんだなぁ」
ボソリと呟いた僕にキミは振り向く。
「でも、君はご両親がいるじゃない」
「父さんも母さんもいないも同然だ。だって、会う回数なんて、年に一度や二度くらいだし」
「そう、なんだ……」
「キミもいないでしょ、この前おばあちゃんが亡くなったって聞いたよ」
「うん。親戚は誰も引き取るつもりはないようだったよ。今は一人だよ、多分、これから先も」
「僕はキミを一人になんてしないよ! 今だって、キミと一緒にいたいから僕はここにいるんだ!」
「そっか……ありがとう」
誰にも愛されていない。
そんな嫌な共通点で僕らは簡単に信じ合ってきた。
僕がっそとキミの手を握ると、出発した頃にあった微かな震えも既になくなっていてほっとした。
キミが一度歩いてみたかったと言ったから、誰にも縛られない僕らは二人、線路の上を歩いた。
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