エピローグ1

 千草は民宿の二階で、堤防のほうから歩いてくる若い男女をながめていた。

 そしてしばらくしてから下に降りていって、民宿の前の細い道をブロック塀沿いに歩いていった。そのまま歩いていくと片側一車線の海沿いの道路に出る。

 千草の背後から民宿に帰ってきた霞の声が聞こえた。

 千草が海沿いの道路に出ると、一台の車が千草の前を通り過ぎていく。千草には車に乗っている二人の顔が見えた。

 そしてまた自分も、あの車と同じように都会に戻っていくのだろうと思った。

 千草は道路を渡って柵越しに海をのぞく。柵の向こうにはテトラポットが置いてあり、道路との間が少しだけ砂浜になっている。そのわずかな砂浜に、道路から投げ込まれたゴミが散乱していた。

「お姉ちゃん帰ろう」

 千草を呼ぶ霞の声が聞こえ、振り返ると道路の向こう側に霞が一人で立っていた。さっき霞と一緒に歩いていたのは、コンビニを手伝っているという人だろうか。明るい縦じまのユニフォームを着ていた。

 生き方は人それぞれ。千草はそう思った。

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