3-14
「何か不思議な感じがする」
霞が寛太郎にそう言った。二人は堤防に腰を掛けて海を見ていた。
「神様がいるのかな」
寛太郎はそう言って、トウモロコシをかじった。
「あたし、神様なんて信じてなかった」
霞はそう言うとペットボトルのお茶をひとくち飲んだ。
「見えない糸でつながれていたなんて思いたくないけど、たぐり寄せたら引き寄せられちゃったって感じだね」
「多分、寛太郎さんがあたしをここに連れてきてくれたんだよ」
寛太郎の横顔を見ながら、霞がそう言った。
「なんか名前で呼ばれるのって照れるね」
「じゃあ、ヒロさんって呼んでいい」
「いいよ。そっちのほうが慣れてる」
空っぽになりたかったのに、すっかり満たされてこぼれそうになっていると寛太郎は思った。
それともお姉ちゃんがたぐりよせてくれたんだろうか。霞はふとそう思った。
いろんな思惑が混じり合って今こうしている。自分がたぐり寄せたわけじゃない。寛太郎はそんな風にも感じていた。
「あたしもここに戻ってこようかな」
海のほうを向いて霞がそう言った。
「でも、歌わなくていいの」
「歌うことが生きていることって思ってたけど、でもここだったら歌わなくても生きていけそう。それに歌いたければ、いつでも歌えるでしょ」
「思ったとおりにすればいいよ」
寛太郎が霞にそう言うと、霞が笑顔で答えた。
「おいしいね、このとうもろこし」
そう言って霞はトウモロコシをかじった。
「そろそろ戻らないと映美さんに怒られちゃうかな」
「あたしも、サブおじさんのところに戻らなくちゃ」
「食べ終わったら戻ろうか」
「そうだね」
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