3-11

 コンビニの駐車場に車を入れて、薫と隆は車を降りた。

 若い女の子がコンビニから出てきて、二人とすれ違うように歩いていく。

「ほんとうにすぐだったね」

 店の前には子どもが二人立っている。

「あの女の子」

 隆がすれ違った女の子を目で追いながらつぶやいた。

「なに」

「さっき見たんだ」

「由貴さんを見たって言ったとき」

「そう」

 薫は女の子の後を追っていきそうな隆の腕をつかんで引っぱった。

「またストーカーになっちゃうよ」

 隆は薫に引っぱられるまま店の中に入っていく。

「いらっしゃいませ」

 女性の店員の声が店内にひびいた。薫は店の奥のほうに入っていく。店の中にはレジの女性以外誰もいないようだ。

「ねえ、コーヒーは微糖でいいかな」

 薫は店の入口のところにいる隆にそうきいた。

「それとも、ブラック」

 隆の返事はなく、薫は冷蔵庫の中から微糖の缶コーヒーをふたつ取り出してレジのほうに歩いていく。

「あの、このお店に門野さんて人バイトしてますか」

 薫がレジの女性にそうきいた。

「ヒロ君のことかな」

「そう、門野寛太郎」

 レジの女性は少し動揺して、レシートとお釣りを客に渡した。

「ヒロ君のお知り合いの方ですか」

「彼いるんですね」

「午後からなので、今は」

「そうなんですか」

 そう言って薫は店のドアのほうに歩いていく。

「ありがとうございました。またどうぞ」

 薫はそのまま店を出ていく。隆はレジの女性をチラッと見た後、薫につづいて店を出た。

 店を出ると子どもたちが二人をじっと見ていた。

「ヒロ兄ちゃんの友だち」

 男の子が二人に声をかけた。

「そうなの」薫は笑顔でそう言うと、車のほうに歩いて行く。

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