3-7

 どのくらい時間がたっただろう。おかしいと気づいた時にはもうずいぶん時間が過ぎていたから、正確なところはよくわからないけれど、二時間以上は過ぎているはずだと寛太郎は思った。

 一台のRV車がライトを消したままコンビニの駐車場にずっと止まっている。その車からは誰も降りてきていない。たまに仮眠をしている人がいるけれど、一度は降りてきて、飲み物を買ったり、トイレを借りたりしている。

 寛太郎は外に出てゴミ箱の様子をうかがうふりをした。そして、ゴミ箱のとなりに置いてある灰皿のところでタバコに火をつけた。

 車の中に男が一人乗っているのがわかった。寛太郎がタバコを吸い終わろうとしたとき、車のドアが開いて男が降りてきた。

 アロハシャツにジーンズ。サングラスをかけ革のサンダルを履いている。

 男は寛太郎のほうに近づいてきて「火を貸してくれるか」と言った。

「どうぞ」

 寛太郎はそう言ってジッポーを差し出した。

「なかなかいいジッポーだ」

 男はニヤリと笑ってタバコに火をつけた。

「今日はあんた一人かい」

「夜はだいたいぼく一人です」

「そうか」

 男はジッポーを寛太郎に返すと、大きく煙を吐き出した。

「ブラックの缶コーヒーをひとつ持ってきてくれるか」

 男はそう言って寛太郎に小銭を渡した。

 寛太郎は店に戻ると冷蔵庫からブラックの缶コーヒーをひとつ取り出し、レジを打った後また店の外に出た。

「釣りはいらないから」

 男は缶コーヒーを受け取ると、そう言って車のほうに歩いて行く。

 寛太郎が店に戻って外を見ると、車は駐車場を出て走り去っていくところだった。

 翌朝、寛太郎はその男のことを映美に話した。

「いるのよね。たまにそういう人」

 映美はサラリとそう言うと寛太郎から離れていく。寛太郎はそんな映美の後姿を目で追っていた。

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