3-3

 隆は薫に呼び出されていつものコーヒーショップにいた。

 何の用があるんだろう。寛太郎のことだろうか。そうはいっても、隆は寛太郎とはあの時以来会っていない。

 それとも由貴さんのことかな。由貴さんとだってたまに食事をするぐらい。そうなんだよな、とても同伴なんてできないし。

 そうか、また同伴してくれってことなのかな。薫には断り切れなくて一度行ったけど、そう何回も行けるわけじゃない。それにあの時はあとで薫とお金のやり取りをした。

「あとであたしが補てんするから」

 そういう約束だった。それに最近はちゃんとお客がついてるみたいだし。

 薫が店に入ってきた時あまりに地味な格好をしていたので、隆はそのことに気づかなかった。

「どうしたの今日は。いつもと違うね」

「何が」

「ずいぶん地味だから」

「うん。あのお店辞めて、またスナックに戻ったから」

「そうなんだ」

 隆は少し驚いた様子で薫を見ている。

「それにしても地味じゃない」

「まあね、それまでが派手すぎたから」

「ねえ、もう一杯コーヒー飲む。冷めちゃったでしょう」

 隆がうなずくと、薫は立ち上がってカウンターのほうに歩いていく。相談事があるわけではないようだ。自分のことはちゃんと自分で決めている。隆はそう思った。

 とにかく呼び出されたのは自分のほうなんだから、隆は薫が話を切り出すのを待つことにした。

「ねえ、元気だった」

「あいかわらずか」

 トレーを持って席に戻ってきた薫は、トレーを置きながらそう言った。

「そうだね。元気かって言われると、ちょっと微妙かな」

 ドーナツをかじりながら薫は、最近彼女のまわりで起こった、とりとめもないことをずっと話している。

 ちょっと気だるい時間が隆と薫の間を通り過ぎていく。この雰囲気も悪くないなと隆は思った。こんなリラックスした時間は久しぶりのような気がしていた。

「ねえ、ところで何か話があったんじゃないの」

「別に何もないよ。何もなくて会っちゃダメ」

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