2-8

「こうして会うのって久しぶりだよね、お姉ちゃん」

「元気そうだね」

「あいかわらず」

「人がいっぱいでびっくりしちゃった」

「あたしもお姉ちゃんを見つけてびっくり」

「あの時以来かな」

「でも、あの時は歌わなかったよ。あいつを見つけてお姉ちゃんがひっぱって行っちゃったから」

 そう言って霞が笑った。

「おいしいでしょう、ここのオムライス」

「うん、いつもコンビニのお弁当だから」

 そう言いながら霞はオムライスを口に運んだ。今日はプラスチックのスプーンじゃない。

「お姉ちゃん仕事は」

「今日はお休み」

「そうなんだ」

 霞は姉の様子が以前とは少し違うと感じていた。毎日同じような生活をしている自分と違っていろいろあるんだろうな。ストーカーの事件もあったし。

「ねえ、夏休みはとれるんでしょう」

 ストーカー事件のことを詳しくきいてみようと思っていた霞は、不意を突かれてあいまいな返事をした。

「何か予定あるの」

「特にないけど」

「じゃ、お墓参りに行こう」

「お墓参りって、おじいちゃんのとこ」

 二人の両親は亡くなっていて、墓は父方の祖父のところにあった。

 でもどうしてお姉ちゃんは、急にそんなことを言いだしたのだろう。あたしはしばらくおじいちゃんの家から学校に通っていたけど、お姉ちゃんは一人で生活していたから、おじいちゃんの家にいたことはない。

 お姉ちゃんがお墓参りに来たことなんてなかったのに。

「いいけど。あたしも久しぶりにあの海が見たいから」

 霞は寛太郎が言っていた海辺の町のことを考えていた。

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