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 自分でもよくわかっている。隆は夜の街を当てもなく歩いていた。

 薫ちゃんが連れてきた由貴さんと夢見さんが別人だってことはよくわかっている。コーヒーショップの窓越しに見ただけでそのことはすぐにわかった。

 でも、夢見さんも間違いなく自分の中に生きている。

「やっぱり会えないよ」

 薫からかかってきた電話に隆はこう答えた。

「由貴さんも事情は分かってくれてるの。それで隆くんに会いたいって言ってるのに」

「でもさ…」言葉がつづかない。夢見さんといっしょにすべてがはじけてしまうように思えた。

「ごめんね、由貴さん。電話切れちゃった」

「いいのよ。それよりも大丈夫かな、その人」

 薫は携帯電話を握りしめたまま黙っている。

「心配なんでしょ」

「でも、誰も夢見さんていう人の代わりはできない」

「決着をつけるまで、待つしかないのかな」

 どう決着をつけるのか。それが一番心配なんだけど。由貴はそう思ったけれど、口には出せなかった。

 薫は黙ってうつむいている。

「ねえ、多分まだこの近くにいるよ」

「探しに行こう」そう言って由貴が立ち上がった。

 薫はなかなか立ち上がろうとしない。

 隆は自分で決着をつけようとしている。由貴の言うようにこの辺をフラフラしているのかもしれない。でも、隆を見つけたとして、薫は隆に何と声をかければいいのか。薫にはわからなかった。薫は不安でたまらなかった。

 また一人自分から離れていってしまう。どうしていつもこうなってしまうんだろう。薫が顔を上げると、そこにはもう由貴の姿はなかった。

 窓を見ると通りを急ぎ足で歩いていく由貴が見えた。

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