閑話 春菊の花言葉は「True Love」1

彼女を見た瞬間、稲妻が走った。

……いや、それすらも矮小な表現に感じるほどの衝撃が私の身体中を駆け巡ったのだ。

ヨーロッパであまり見ないアジア系の人種、その中でも童顔どうがんの顔つきで肌の色はイエロー、観光や留学で来る日本人かチャイニーズだと皆が思うだろう。

だが私には違って見えた。


とても細い身体つきなのに洋服が似合わない。

キリリとした目つきは獲物を見つけたコンドルのようでいて優しさもあり柔らかな眼だと思った。

そして黒い髪は自分が見てきたどの髪よりも美しく見えた。


洋服は体にフィットするように作られていて本来細い身体の人間にとってはシルエットがよく見れて美しいと感じるものだ。

だが彼女は洋服に着られるわけでもなく着ているわけでもない。

洋服が似合わない。

この表現が最も当てはまるとでも言うかのような見た目。


そして彼女から感じたものの答えに気が付いていたとき

私は行動を起こしていた。

先ずは念入りに彼女の身辺調査をした。


彼女は甘夏 春菊という人物で日本人らしい。

次に彼女の友人、山羽 葵、日本の音楽関係の会社の社長の娘で本場のバイオリンやピアノなどを聴くために留学したらしい。


春菊さんは自分の見聞を深めたいという理由で国外留学という選択をし、文化を体験していると聞くが彼女を一目見た時、そして彼女が日本人ということを知ったとき私は彼女がどこまでも日本人なのではないかと思った。

日本人は個を表に出すことはあまりないが国という協調性が表に出やすい傾向にある。

春菊さんにもそれが感じられた。


春菊さんは正に「道」なのだ。

私が春菊さんを調べる過程で日本についてもたくさん調べた。

調べ抜き考え、統合した結果

日本人は「道」というものを大切にしたがる。


この「道」というのは昔から倫理に反したことに理由をつけるために用いられるものなのだ。


我々の国で言う騎士道

すなわち人殺しの矜持だ。


日本には武士道から発展し武道、柔道、空手道と「道」をつけたがる傾向にあった。

そしてそのどれもが精神を修行せよというものだった。


茶道、花道は元々日本の貴族に当たる人物たちの遊びという記録もあり、現在ではそれを”稽古”とし礼儀を尽くしていた。

今思えば一昔前の日本のベースボールは野球道と呼ぶ人物も居た。

日本でいう昭和の精神というやつなのだろうか、それと春菊さんが同じように見えて違う。


「道」とは精神修行であって精神修行にあらず。


私が導きだした答えは


「道」とは他の事柄を借りた哲学なのではないか


日本は神道

八百万の神

物事全てに神が宿るという考え方だった。


即ち自分という存在にも神、それに近しい何かを感じ問いかけ続けよという暗示

故に精神修行であって精神修行にあらず


仏教の座禅のような悟りもまた一つの哲学


日本人はソクラテスを目指しているのかとすら思えてくるその「道」に私は惚れたのだと思った。


だが彼女の「道」に惚れたわけではなかった。


哲学を大事にするのに協調性を大事にするこれもまた異端だということに気が付いたからだ。

日本人は協調性というものを重要視していた。

我々白人種にも一種の協調性のようなものはある。

だが日本人は種全体というよりも30人くらいの極少数の協調性がずば抜けて高いのだ。

即ち自分の考えの証明を怠るケースが多かった。


つまり哲学を考えながらもそれを実行している日本人は少ないということだった。

私はいくら問いかけても自分が何故彼女に惚れたのか皆目が付かなかった。

どうしてもその答えが知りたくなった。


だからこの止められない思いを先ず果たしてそれから答えを出そうとした。

そしたら彼女に


「そんなに好きなら私の好きなところ書き出してくださります?」


そんなことを言われた。

これでは本末転倒だった。

いくら考えても出ない答えに頭を悩ませ、夜が明けるまで考えていた。


そのとき、たった一つの答えが見つかった。


「そっか、好きなんだ」


一緒に居て欲しい。

そう思えるから好き

雰囲気や性格なんて関係ない。


「そういえば日本には告白という文化があるそうじゃないか」


告白とは秘中の思いを人に打ち明けること


ならいっそそのままのことを言えばいい


「俺は君の好きなところはない、でも君は好きだ」


頓智のような告白

これに思わず彼女は笑っていた。


「あんさんも変な告白の仕方しとりますね。ですけども私はあんさんに興味はありまへん。他の他人様に迷惑のかかる好意もやめりん。それは好意やなくただの迷惑ですわ」


告白の結果は散々だろう。

告白した相手に説教までされたのだ。

振られたと見ても良かった。


でもどこかさらけ出すわけでもなく自分を磨き続ける彼女が愛おしく見えた。

まだまだ私の恋は始まったばかりだ。

この恋が愛に変わるとき私は彼女に対する全ての好きを知るのだろう。


それが恋愛というものだ


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あとがき

この閑話に関してはスライム道がアイデア思い浮かばないときに時間投稿までの時間も無いと判断したときのみ更新される予備話ですので滅多に来ない可能性がございます

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