最終話

満月の日。学校が終わり、病院へ向かっていながら空を見上げると、薄らと満月が見えた。

「早く行かなきゃ。」

足早に病院へ向かう。

「拓人くん、来たよ!...ってあれ。裕太くん」

病室に行くと、拓人くんはいない。ただ、そこには裕太くんがいた。

「お姉ちゃん、」

「拓人お兄ちゃんは?検査とか?」

私の言葉に対し裕太くんは首を横に振る。

「じゃあ、...どこ?」

そう言うといきなり裕太くんは私に抱きついて来た。

....嫌な予感が頭を横切る。

「..........拓人お兄ちゃん、...死んじゃったっ......」

その途端、頭の中が真っ白になった。


泣きながら言う裕太くんを見て益々、現実なんだ。と思わされる。

「ねぇ、拓人お兄ちゃん、帰ってくるよね?お姉ちゃんっ....」

「.....裕太くん。」

裕太くんを抱き締め返す。

これが現実なのにまだ受け入れられなくて涙も出てこない。

「あ、もしかして貴女が夏菜子さん?」

一人の看護師さんが部屋に入って来た。

「はい。」

「やっぱり。...あの、これ。拓人くんからよ」

看護師さんは私に手紙を渡して来た。

「.....ありがとうございます。」

「いえ、貴方のお陰で拓人くん。前よりも明るくなって、感謝してる。本当にありがとうね」

軽くお辞儀をされ、私もお辞儀する。...そうだったんだね。

「裕太くん。私と一緒にお部屋に戻ろう?」

看護師さんの言葉に裕太くんは頷く。

「裕太くん...また会おうね。」

「約束だからね。お姉ちゃん」

涙声で言うその言葉に私の胸は苦しくなる。

「もちろん」


病室に一人。でもなんでかな、寂しくない。さっき看護師さんから貰った拓人くんからの手紙を読んでみる。

封筒を開けるとそこにはメモ用紙一枚。そしてそこに書いてあったのは....


「ふふっ、拓人くんらしい。」

少しの笑いと共に涙も出てくる不思議な感じ。

拓人くん、私、下で見ててあげるから拓人くんは上で私のこと見ててね。


【夏菜子ちゃん、僕、月の近くに行けて嬉しいよ。....でも夏菜子ちゃんと離れるのは寂しい。だから満月のときには空を見上げてね。僕も見守ってあげるから。じゃあ、またね。】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

七音 @loxx007

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る