第6話
その日はそのまま帰った。自分が風邪をひいてることも忘れており、家に帰ると一気に辛くなる。これは風邪の所為でもあるけど、拓人くんのこともある。だけどこれまでのことを思い出してみる。拓人くんは月を見ることが好きで、きっと半月、満月、新月のときは病院を抜け出して近くにある私の通ってる学校まで来て見に来てたんだ。それは月が病院よりも学校の方がよく見えるから。私を誘ったのは、まぁ、たまたまかもしれないけど。だから手紙のこととか何も聞かないでって言ってたんだね。気づいたら涙が止まらなくなってる。
「....っで、なんでよ...」
こんなに泣きじゃくったのは初めてだった。
現実を中々受け止めれないけど、風邪は治り、学校も普通通りに行って。
でも頭の中は拓人くんのことでいっぱい。
学校帰り向かった先は、拓人くんが入院してる病院。
ひと目でも顔を見たい。でも病室がどこか分からない。
看護師さんに聞くにも......と辺りを見渡していると、この前話した男の子がいる。
私に気づいたのか、男の子は笑顔で此方に駆け寄ってくる。
「この前のお姉ちゃん!」
「こんにちは。」
男の子はおもちゃを大切に手で持ってる。
「そのおもちゃ気に入ってるんだね?」
そういえば、この前会ったときも持ってたような気がする。
「うん!拓人お兄ちゃんからもらったんだよ!」
「...拓人お兄ちゃん。」
「うん!最近は調子が良くないみたいであまり遊んでくれないけど」
悲しげに言った男の子。
「ねぇ、良かったらその拓人お兄ちゃんの所まで連れて行ってくれないかな?...えーとボク、お名前は?」
「いいよ!僕は裕太!」
「ありがとう。裕太くん」
自分で決めたことなのに、なんだろう。とても緊張する。
「ここだよ!」
裕太くんは拓人くんがいる個室の入り口にある柏木拓人というネームプレートを指差した。
「ありがとう。裕太くん」
「どういたしまして!じゃあ僕、自分のお部屋に戻るね!バイバイ!」
「バイバイ」
「よし、行くか。」
胸の高鳴りが最高潮に達してるけど病室を開けるドアに手を掛けた。
___「こんにちは...」
私がそう言うとベッドから此方に顔を出す拓人くん。
「...え、夏菜子、さん?どうして.....」
改めて久しぶりに会った拓人くんはこの前見たときよりも痩せ細り、目の下にクマもある。胸をギュッと締め付けられる感覚に襲われる。
「ごめん。この前、風邪引いてこの病院に来たら、...たまたま拓人くんを見つけて...で、あの男の子。裕太くんに拓人くんの病状とか聞いちゃったの、心配で...。本当にごめんっ!」
話してるとき今にも泣きそうだったけどなんとか堪えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます