三十四話「狩りの時間」

「凄い綺麗……」


ユイの言葉に意識を戻す。


「あ、そうだ。ステータス見てみようよ!」


ユイは俺の手を取る。


「ああ、そうだな」


この武器を装備状態にして……


全体ステータスを開き、武器のステータスが表示される。


〜〜〜〜〜

太刀

鱗崩

攻撃力:486

武器情報

・自動回復【微小】

・抜刀攻撃ボーナス

・復讐者(アベンジャー)


この武器……現状作れる最大攻撃力の太刀とほぼ同じだ。むしろ誤差程度だが高い……そしてそれよりも気になるものがある。武器情報の最後に書かれた復讐者アベンジャーという能力だ。


「こんな特殊効果見たことないぞ……」


上級武器という普通の武器を進化させていくと、できる武器がこのゲームにはあるが、フリースキルやアーマースキルとは別にオマケレベルではあるがスキルを所有している。それは基本的に一つしかついていないのだのが……この武器は三つある上に聞いたことも見たこともないスキルがついている。


「私も見たことない……効果は?」


「今、見てみる」


俺はディスプレイに表示された『復讐者』の部分をタップする。説明ページがディスプレイに重なって出てくる。


〜〜〜〜〜


『復讐者』

一度攻撃を受けた大型モンスターへの攻撃力が五十パーセント上昇。回復すると効果を失う。


なるほど……つまりモンスターから攻撃を受ければ一.五倍の攻撃を叩き込めるって訳か。装備が良ければダメージを抑えながら火力も出せる。

確かに理想的だが……俺の装備とコンセプトが合わない。

俺の装備は相手の攻撃を躱して、攻撃を小刻みに与えるタイプの装備だ。相性が悪すぎる。


「俺の装備は防御値を捨てて、機動力と回避に振ってるからなぁ。あいつの一発で死にかねないぞ」


「……!」


ユイが俺の呟きを聞いて思いつく。


「いや、大丈夫だよK1君!」


「え?」


ユイの発言を聞き、頭の上に?を浮かべる。


「私のこれ使って!」


ユイはアイテム欄を開き、アイテムを一つ出す。


「はいこれ」


アイテムを俺に投げされ、受け取る。


「何だこれ?」


小さな巾着、肌色の布製だ。


「鉄壁の聖符せいふってアイテムなの。防御系のアイテムでどんな攻撃も半減できる能力があるの!回復出来なくなる縛りがあるけど……」


……!そうか!


「自動回復で!」


「そう!能力による回復は問題ないんじゃないかって!」


よし、試してみるか。


「明日の朝、試してみよう」


「うん!」


〜〜〜〜〜

翌日AM8:00草原一番エリア


朝一番、まだゲーム内でも現実世界でも寒い朝だ。

俺とユイはこのゲームで最も弱いとされている大型モンスター、ピクボーの前にくる。ピクボーはこちらから攻撃しない限り攻撃してこない温厚な大型モンスターで、攻撃も弱い為、初心者が初めて倒す大型モンスターとなるモンスターだ。体力は1460に設定されているらしい。


「よし、抜くぞ……」


「うん……」


互いに白い息を吐き注目する中、俺は刀を抜く。


ユイは十数ダメージしか与えない『投擲石』というアイテムをピクボーに投げる。


ピクボーは激昂し、ユイとピクボーの間に立つ俺へ突っ込んでくる。


「よし、来い!」


数秒後にピクボーと激突する。


激突してダメージを受けたのを確認してピクボーから離れる。


「これで発動……してるのか?」


「ん〜?エフェクトは出てないけど……」


とりあえず打ち合わせた実験の通りに進める。


ピクボーの通常倍率の部位を攻撃する。

この一撃、そして次の攻撃を当てた時、ピクボーの体力である1460を全て削れれば『復讐者』の能力は発動出来てることになる。

最初の『投擲石とうてきせき』のダメージと鱗崩の攻撃力の一.五倍の729.そしてそれが二回で1458ダメージ……それで1460を超える計算だ。

一撃目を当て、ピクボーが怯んだところにもう一撃を与える。するとピクボー呻き声と共に倒れる。


「……!自動回復は発動していたよ!やっぱりアイテムによる回復じゃなければ大丈夫みたい」


ユイの報告を聞き、自身のHPゲージを確認する。

確かに自動回復は発動している。

かなり微量ではあるが回復している。


「いいなこのスキル」


シナジーが上手く噛み合ってる。


「よし、それじゃ秘密基地に戻ろう。みんな待ってるよ」


ユイの後ろについていく。そしてあの場所に着くやいなや作戦会議を進める。

時間は経ち、一月はあっという間に終わった。

俺は刀の感覚をつけるため、草原マップの端で太刀を振るった。

今までこんなことしたことは無かったが、これほどにない戦いになるのは間違いないないだろう。

それに失敗は許されない。

俺は考えをやめ、太刀を振るう。

〜〜〜〜〜


そして2月15日、あれから約一ヶ月。

出来る準備は全て整えた。


「行こう」


「うん」


「それじゃ行くっすよ」


俺達十人のプレイヤーは氷河ステージへの飛行船に乗り込んだ

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