第11話 彼女の行動は俺の行動

週末までの夜は、俺の映像をまなみに届けていた。

自分のアルバムからはじまり、俺の部屋だったり、俺の姿だったり。

俺の視覚がまなみの視覚に焼き付いていく。

夢の一つでも見てくれただろうか。


いよいよ明日か。

ふと、まなみの視覚を見ていた。

手帳を開いてボールペンで書いていた。

日記のようだった。

最近、タツヤ君の夢を見るようになった。

夢を見るっていうのはどっちなんだろう、私が想っているのか、相手が想っているのか。

何だか気になる。

明日は送迎会。ちょっと楽しみかも。


「よっしゃー」

思わず両手をあげていた。

これはいけるかも。

相手はかなり俺を意識している。

長い道のりだった。

この能力を得てから今まで、綿密な計画でここまで来れた。

後は仕上げだ。

でもここで焦ってはいけない。

落ち着いて俯瞰するんだ。

全体をよく見ろ、何か問題点はないか。不安要素はないか。


気になると言えば里見くらいか。

かずやとはどうなってるんだ。

ちょっと俺のことを気に入ってはいるようだけど。

一応覗いておくか。


ここは里見の部屋か。

そう言えば里見に入るのは2回目か。

ベットの上でゴロゴロしている感じだな。

スマホで何か打っているようだった。

ラインでもしてるのかな。

どうやら里見も日記を書いていた。


明日でたつやさんもあそこ最後か~。

寂しいなー。

明日がチャンスなのかな。

どうしよう。

明日。

とりあえず明日の朝の運勢で決めよっと。


まじかよ、困ったぞ。

ややしいことになりそうだ。

かずやを敵に回したくないし。

何とかしないと。


俺にできること。

よし。里美にも共有。

そうだ確かみんなでとった写真があったはずだ。


かずやの写真、よーく目に焼き付かせるんだ。

それが終わったら、まなみと共有しよう。


木曜の夜が慌ただしく終わったように感じた。

だから、今日はやけに眠い。朝は起きれず、昼まで寝ていた。


いつもの朝の食卓が囲めなかったことは心残りだけれど、今日は夕方までゆっくりしようと思った。

だけど、それまでの時間はまゆみを感じておきたかった。

横になりながらあれを見ていた。


楽しそうに友人とカフェでランチをしている。

女友達だったことにホッとしている自分がいた。

パスタを食べていた。ちょうど食べ終わる頃だろうか。

相手はコーヒーを飲んでいた。


そうか、外は雨が降っているのか。

まなみ越しに窓を眺めていた。

何人かの人が傘をさしながら歩いていた。

よく見ると窓ガラスにまなみが映っていた。

水引のピアスをして、髪もカラーを入れていた。

今日のためにお洒落をしてくれていたんだったらうれしいけど。

時計を見ていた。

まだ1時。

今日のスタートは6時からだった。


どうやら貸し切りにしたらしい。どれだけ来る予定なのかはかずやしか分からない。

まだ5時間もあるのか。

そうだ、俺も髪切りにいこう。

最近は自分で切ることが多かった。

ボリュームだけ抑えるためにすきばさみですき、サイドはバリカンで剃っていた。


まなみが行っているサロンに行ってみよう。

こないだ見た時に、ちょうどサロンの名前が見えた。

「サロン パーシェ」

平日だから今日はすぐに入れるだろう。

たまたま感を装いお店に入った。

「ツーブロックで」

いつものスタイル。違うのは自分で切るか、人に切ってもらうか。

しかもまなみがカットしてもらう人に、カットしてもらっている。


間接カット。


もしかしたら同じ髪型になったりして。

さすがにそれはないかと勝手に想像してニヤニヤしてしまった。

時計を見るとちょうど17時が過ぎていた。


そろそろ向かおうか。

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