第11話 再会
今日は今年初めてウールのコートに袖を通した
風が吹くとさすがに寒い
身体がぶるっとふるえた
そろそろ…避難かな…チョコレートを口にいれながら思う
勝手に意識が自転車置場のほうにむく
初めてここで彼に会ったときのことを思い出した
同時にあの…コンビニでの態度も
何もなかったかのようなあの態度
“ほんまに気づいてへんの?…アホやな…”
あんなこと言っといて…無視?
あの日の彼の態度を思い出すとなぜか…イライラした同時に…さみしくなった
「のどかわいた」
独り言をつぶやいて道路をでてすぐのところにある自転車置場横の自動販売機に近づく
いつもの…とおもい並んだ缶の列をさがす…
ない…
いつも彼が買ってきていた私のすきな、あのミルクティーがない
変わった?商品…いやでも…
そういえば彼がいつも飲んでるあのブラックのコーヒーもない
いつも温かいままのボトル
ベンチに近いここで買ってると思ってた
ここじゃ…ないのかな
わざわざどこかで…?
ーーーーー
「あ、これおいしいね」
「ん?あ、あぁ…なんか新商品でてた」
「なんか甘すぎなくておいしい」
「ふーん、おれブラックしか飲まへんしわからんけど」
「へーいいの教えてもらった!おいしいよ、のむ?」
といって飲みかけのボトルをさしだす
「……え、……ええわ…」
といって差し出したボトルを見てすこし目を左右にうごかしてそっぽを向いた彼
「あ、そう?」
ーーーーー
自動販売機を眺めながら、あの日の会話を思い出した
今日も…彼は現れない
ベンチにもどりイヤホンを耳にいれた
彼が来なくなって音楽を聞くようになった
適当なプレイリストを探して音楽をきく
音楽をききながらぼーっと木々を見つめた
1曲目に流行りのk-popが耳に飛び込んできた
アップテンポの高い声が響く
…気分じゃない…
おにぎりがころがった、あの地面をみつめた
いつの間にか…彼を待っている自分がいる
きづいたら…
彼がとなりにいることが普通になってた
人とあわせるのがめんどくさくて、しんどくて、
人と一緒にいるのが辛いときがあって
あの高校の教室の閉塞感から抜け出したくて
1人になりたくて
やっと大学にはいって東京にでてきて、
それでここを見つけたはずだった
でも…
カーテンのすきまから、するっと音をたてずに入ってきたみたいに
いつのまにか、彼がとなりにいて
気づいたらそれが普通になってた
他愛もない会話が楽しみになってて
それがないと、なんとなく居心地が悪くて物足りない
ただ隣にいる
そんな空気みたいな…
なのに、いきなり消えた
だから息苦しいのか…
曲が変わって次の音が流れだした
延びのある声がすごくきれいな男性4ピースバンド
目を閉じて声をきく
なんか…
泣きそう…
そのときふいに左耳から音楽が消えて、耳が涼しくなった
驚いて耳に手をやり目を開くと
イヤホンを耳に入れる人影
彼が目の前に立っていた
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