第4話 ニカイメ
「…なんとかころりん?」
彼の言葉と語尾をあげた抑揚に思わず笑ってしまって、その流れで地面に目を落とすと、コロンと転がっている白い三角の物体…
「なんとか…って…おむすびでしょ…」
と、目線を上げると、目の前に笑顔の彼の顔があって、その予想外の距離の近さに思わずのけぞる
「…え、いや、じゃない!ていうかあなた、この間といい、今といい、なんか距離…ちかすぎ!ほんとに!」
「あなたじゃない、タナカです。あ、いや、ショウでいいよ」
「あ、は…?いや、だから!人の話きいてます?」
「え、うん、あ、ごめんーお昼ダメにしてしもたなぁ、お詫びにおごるわ、ラーメンすき?」
「は?え、ラーメン?すきだけど…」
「じゃあきまり!はい!いこ!」
「あ、え?ちょ、そんな勝手に…」
「めっちゃうまいねんで!塩ラーメン!穴場中の穴場やねん!絶対うまいから!はよ!」
といって彼は勝手にベンチの端に置いてあったわたしの鞄をもってすたすた歩きだした
「え!?あ、ちょっとま…」
…うわ、足ほそ…、なが…その辺の女子よりぜんぜん…
って…いや、ちがう!
地面に落ちたおにぎりを拾い、つつみなおしてバックにいれ、「ちょっと!鞄返して!」と叫んで彼を追って道路にでた
すると、彼の姿がない
焦って見渡すと、後ろから声がした
「こっち」
振り向くと自転車を傍らに携えた彼の姿
「え、自転車?」
うん、といいその自転車にまたがって、半分顔をこっちに向けた
「はい、どうぞ」
「え?」
「ハブついてるし、乗ったことある?」
「え…あるけど…」
「じゃあはい!はよ乗って」
そう言って彼は前を向いた
太陽の光を受けて銀色に光る自転車
彼の頭をしばらく見つめてから近づき、肩に手をやって、力をいれてステップに足をのせた
見た目より硬い彼の肩に捕まると「いくで!」といって自転車がうごきだした
すこし蒸し暑い湿度の中、風をきって自転車がすすむ
木々の間から太陽の光がちらちら見えて、頬に当たり、風が髪を揺らす
気持ちよさに思わず目を閉じた
「こわない?」
「…え?なに?」
「こわくない?」
「え?ううんぜんぜん、気持ちいい」
「…そりゃよかった」
それがショウにふれた…二回目のこと
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