その四


 洞窟風呂に辿り着いた僕達が先ず最初に目にしたのは、薄汚くて立派な古民家風の建物と、その軒先に並ぶ洗濯物でした。


 この古民家が『洞窟風呂』の受け付けである事は間違いなさそうなのですが、どうも干してある洗濯物に違和感がありました。貸し出し用のオレンジのバスタオルでも干してあるのなら話は分かります。そうであれば、恐らく僕はそのバスタオルは借りず、洞窟風呂を拝む事もなく家路に着くと思いますが。


 その洗濯物は妙に生活感が漂っているのです。まるで一般家庭のベランダにでも干してある様な物が並んでいました。田舎の中学生が履くジャージの様な物まで干されていました。


「おい、なんだアレは?」友人は後頭部をさすりながら僕に問い掛けます。

『アレ』とは恐らく洗濯物のことを指していたのでしょうが、僕にも分からなかったので何も答えず、その横を車で通り過ぎ『駐車場』と書かれた看板の方へと向かいます。


 古民家の裏手にある駐車場はやたらと広く、観光バスまで停まっていました。それも数台。他にも乗用車がかなりの数停まっていて『洞窟風呂』は繁盛している様に見受けられます。が、どうもおかしいのは確かです。


 これは後になって分かったのですが、どうやら『洞窟風呂』は単体で営業している訳ではなく、近くのホテルの所有物で駐車場もそのホテルのものでした。『洞窟風呂』はそのホテルの計らいで一般にも開放していたのです。


 ただ、おかしいのはそこではなく、観光バスです。どうやってあの道を通ったのかと。

 これも後になって分かったのですが、おかしかったのは僕の車に取り付けられていたカーナビの方だったのです。

 

 なんとか目的地に辿り着いた僕達は、車を降ります。友人はまだ洗濯物が気になっていた様で、一目散に駆け出しました。なにか如何わしいものでも見つけたのかもしれません。

 そんな友人の背中を眺めながら、僕はちょっぴり大きい車を乗りこなしてここまで辿り着いた事で、なんとなく誇らしい気分になったのです。


 因みに、後日最新のカーナビに取り替えようと『オー○バックス』さんに相談したところ、十万円のカーナビを取り付けるのに『工賃込みで二十万』掛かると言われ泣く泣く諦めました。


 アメリカ生まれの車に興味がある方は、ご購入される前に、古いカーナビ、よく分からないメーカーの馬鹿デカいアルミホイール、壊れてんのかな? なんて思うくらい馬鹿デカい音がするマフラー、社外のHID、そして効いているのか分からない『社外のセキュリティーキット』だけは、中古車屋さんに駄々こねて交換して貰ってから購入することをオススメします。

 特に『社外のセキュリティーキット』だけは必ず取り外して貰ってください。必ずです。「因みに」から話が長くて申し訳ありません。ですが、もう一度言います。必ずです。


                (続く)



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