その二


 僕達は早速スマートホンを取り出して、日帰りで入れる温泉を探しました。


 今思うと不思議なのですが、あの時僕は「何が楽しくて、頭をバーバースタイルの刈り上げでキメた男と温泉に行かなくてはならないんだ?」とは微塵も思わず、客が一人も居ないマクドナルドで大はしゃぎしながら、温泉を探していました。


 すると、友人が「おい、ここがよさそうだぞ」と目を輝かせ始めたのです。僕は「どれどれ、君はセンスの欠片もないからなぁ」などと憎まれ口を叩きながら、友人の手に握られたスマホの画面を覗き込みました。


 そこには、煌びやかにライトアップされた、冒険心を掻き立てられる洞窟の先に、まるで秘境を思わせる石造りの大浴場、大パノラマで望むオーシャンビューの露天風呂まで付いた、日帰り温泉『洞窟風呂』なるものが写し出されていました。しかも、料金は千円でお釣りがきます。


 少しドヤってみせる友人に「まったく『温泉』で検索しただけではないか君は」などと、少し腹立たしくも思いながら「君もたまには役に立つんだな」と、僕はその仕事ぶりを褒め称えました。


「では早速、その洞窟風呂なるものに一風呂浴びに行こうではないか」とボウズをくらったことなんてすっかり忘れ、浮き足立った僕達は駐車場に停めてあった、アメリカ生まれのちょっぴり大きな車に乗り込んだのです。


「おい、なんだい? この釣具は? 邪魔だからゴミ箱に捨てて行こう」なんて、助手席で冗談を言っている至極ご機嫌な友人を他所に、僕はカーナビに『洞窟風呂』をセットして、寂れたマクドナルドを後にしました。

          

                (続く)





 皆さんもうお気づきかと思いますが、この話は一話完結でも二話完結でもありません。暫くの間お付き合い頂くことになります。もし「気に入ったから続き読みたいよ」って方は、お手数ですがフォローして頂けると、僕がすごく喜びます。


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