『洞窟風呂』の話。
(有)柏釣業
その一
『洞窟風呂』の話。
以前、地元の友人と海釣りに出掛けたときの話です。
クソ暑い真夏の連休初日、僕達は前日の夜中出発して、車で数時間掛けて釣り場に到着、早朝から昼頃まで釣りをしていました。
魚釣りというのは、別に魚を釣りに行く事だけが目的とは限りません。特に海釣りともなれば、半ば観光地化された海辺の町を散策するという醍醐味もあります。なので、魚は釣れなくても良いのです。
しかし、僕達は生粋の釣り師なので魚を釣る事以外に興味がありません。観光客達が動き出す頃には竿を仕舞い、家路へと着きます。一般人とは真逆の動きをするので渋滞にハマる事もありません。
その日は勿論、ボウズだったのですが(一応説明しておきますと、ボウズとは魚が一匹も釣れなかったということです)我々は動じません。なれたもんです。ボウズをくらった二流の釣り人なら恐らく、気晴らしに美味しい物でも食べて帰ることでしょう。しかし、そんな事をしていたら、生粋の釣り師は数ヶ月で破産してしまいます。
生粋である我々のお昼ご飯は、海辺の観光地にある『地元のスーパー』に隣接されたマクドナルドです。客なんか一人もいません。僕は「このマックよく潰れないな」なんて思いながら、ビッグマックのセットを頂きました。友人はフィレオフィッシュのセットだったと思います。
僕達は無言でハンバーガーを平らげ「さて帰るか」となった矢先、友人が「温泉に入って帰ろう」などとぬかすのです。
僕は生粋の釣り師である友人が、そんな事を言い出すなんて少し驚きましたが、若干食い気味に「それは名案じゃないか」と友人の意見に乗りました。
ここで注意して欲しいのは、二流ならともかく我々は生粋です。決して、わざわざ車で数時間掛けてここまで来ておきながら、ボウズのままハンバーガーを食べただけで帰るのが悔しかった訳ではないという事です。
(続く)
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