第3廻-ギアボーグ強襲!戦えG-FORCE!
Chapter9-FRIENDSHIP/命の順番
「お、俺が
予想外の展開になってきたな。
俺が
「えぇーーッ! 廻がァーーッ!?」
「近年GS事件は発生件数も規模も比べ物にならないほど増加している。今まで通り少数精鋭でやるにはとても手が回らないのさ。フェニックスギアの未知数のパワーと君のコマンダーとしての類稀なるオペレーション技術……必ず我々
「ま、待ちなさいよ!
「時に命がけの捜査となる以上、ちゃんと
「0がいっぱい……チョコバー換算で2000個に相当するわね……」
なんでチョコバーで数えてるんだコイツ。
「無論捜査官の事件の貢献度が高ければさらに報酬アップだ」
「俺は別に金に困っているわけじゃない。俺の夢は」
「世界一のコマンダーになること……だろ? ならば存分にウチを活用してくれたまえ。
この人のような強いコマンダーとも戦えるなら確かにこれ以上無いくらいの好条件だ。
しかし気になるのは何故今日会ったばかりの人間にここまで入れ込むのかってことだ。
「その反応じゃいまいち腑に落ちてないな? 何故ここまで自分を仲間に誘いたがるのかその理由が知りたいって顔をしているぜ」
「……ッ!?」
俺はたじろいだ。
やっぱりこの人は何かを狙っている。
俺の実力とかそういうものとは別の目的があるんだ。
「君を襲ったギアボーグ、
なるほど、そういうことか。
それが俺を手元に置きたがる理由か。
心の中で点のように散らばっていた疑念が線を紡いで一つの確信へと変わり、俺が口を開きかけたその時何かを打ち付けるような乾いた音が病室内に鳴り響いた。
「ふざけんじゃないわよ……ッ!」
音の正体はチョコが
肩で呼吸をし小さな体をいっぱいに震わせ、その顔は怒りに満ちていた。
こんな鬼気迫るチョコの姿は久々に見るかもしれない。
「別にふざけちゃいないさ。今はお仕事モードだからな」
「要するに
「
「命は数じゃない! 亡くなった人には悪いけど……私にとっては殺された3,000人の命より
「否定はしない。だが我々も大義を曲げるつもりはない。仮に
「だからそれがふざけてるっていうのよ!」
チョコが再び振りかぶり
「2発目はぶたれてやらん……私はロボットアニメの主人公ではないのだ」
「……ちっ! あーーッもう! ム・カ・つ・く! 早急にブドウ糖の補給が必要だわ!」
掴まれた手首を振り落とし、病室から出るチョコ。
不完全燃焼といったところか、まだ怒りが収まったようではなかった。
「どこ行くんだ?」
「外の売店でジュースでも買って来んのよ!
「あぁ頼む、それと……ありがとな」
「い、いきなりなによ?」
顔を赤らめ、ゴーグルを下ろすチョコ。
動揺しているのかゴーグルがずれてかかっていた。
「俺さ……やっぱりチョコが友達がいてくれてよかったって思ってるよ」
「なんで恥かしげもなくそんな臭いこと言えんのよ……まったく」
「私はぶどうジュースで頼む」
「なんで私がアンタの分まで買ってあげなきゃなんないのよこのウンコクズッッ!」
「売店は一階のエントランスにある。ここは都内一デカい病院で迷いやすいから気をつけるんだぞ」
「ッッ!? うるさいバァーーカ!」
チョコは引き戸を破壊する勢いで締め、不貞腐れたように病室を出ていった。
今日は随分情緒が激しいな。
「アカメ、念のためこっそり後から着いていってやれ」
「……」
アカメさんはコクリとうなづくと
「随分嫌われたものだ。しかし自分以外の人間のためにあそこまで怒る事が出来るとは……今も顔がヒリつくよ。君にはいい友達がいるんだな」
打たれた頬をさすり、やれやれと言った具合に首を振っていた。
「昔から破天荒なやつでしたから……でも俺は親友だと思ってます」
「それは微笑ましいものだな」
普段はギアソルジャーに目が無く、変なところも多いけれど仲間思いで優しい女の子だ。
兄さんも言っていた。
『ギアソルジャーが本当に好きな奴に悪い奴はいない』と。
「ところでアカメさん……でしたっけ? あの人も
「あぁ……まぁ人ではないがな。君も
「【お世話もお洒落もアイドル級!】ってキャッチフレーズで触れ込んでる多機能女性型アンドロイドのことでしょ。俺の家にもいますよ、もっとゴツゴツした見た目のやつだけど」
「アカメはその最新型だ」
「う、嘘ォーーッ!? どう考えても人間でしょあれは!!」
「君の家にあるやつはどうか知らないが、アカメのような第7世代型の
「そうなんですか……しかしその割にはアカメさんはウチの
「アカメはGS犯罪捜査用に改造し過ぎて発話機能を失っている。ただ与えた命令には120%応えてくれるウルトラメカウーマンだ。GS犯罪の検挙率はそこらの捜査官よりよっぽど高いぞ」
身体のパーツの精巧さ、肌の質感、瞬きや呼吸などの仕草一つとってみても普通の女の子にしか見えないのに中身は機械仕掛けのロボットなのか。
人類の進化って凄まじいな。
「ん、ギアシューターに捜査無線が入ったようだ……この番号はここのエントランスだな……
「たった今
「君、やっぱり意外とモテるのかい? 隅に置けないねぇ」
「俺にチョコ以外親しい女の知人はいませんよ。母親も長期海外出張でしばらく会ってないし、今言った通り家政婦代わりの
「素性がわかるものは何も持ってないのか? ギアシューターとか」
「それが……ちょっと変なんです」
「変?」
「彼女もコマンダーのようで彼女の持っていたギアシューターに記録されていたコマンダープロフィールをアストラルネットで検索したんですが閲覧が出来なくて」
「そのコマンダープロフィール、私のギアシューターに転送してくれ。隊長権限で
「わかりました、今
「
アストラルネットは太陽系間でも快適に通信が行える優れもの。
アクセス遅延が原因ではないだろう。
コマンダープロフィールが閲覧出来ないのには別の理由がありそうだ。
「コマンダープロフィールが閲覧出来ないとすれば有力な理由は2つ。
①我々が捜査上の都合で閲覧を制限している。
そして……ッ!?」
転送されたコマンダープロフィールを見て
「どうしたの?」
「
「コマンダープロフィールが閲覧出来ないもう一つの理由はな……②既にそいつが死んでいるって場合だ!
「じゃ、じゃあ今電話の向こうにいる女は……まさか!?」
「目の前の女を絶対逃すな! そいつはS級GS犯罪者の
「あーあ……バレちゃったみたいね。まぁいいわ……遊びの趣向を変えましょうか」
「くっ……ァァァァァァ!」
電話越しに聞こえる捜査官の叫び声。
何か肉を噛み潰すような耳触りな音。
いる……
直接見えてるわけじゃないのにアイツが何をしているのか感じ取れる。
俺の体内にアイツの
心臓に巻きついた蛇凶の
そしてこれは多分だけどアイツも。
「胸が疼くわ……
俺の存在を感じているはずだ。
だからこそ現れたんだ。
「それじゃはじめましょうか……仕込みを♡」
今までとは比較にならないすごい数だ!
次々に人を襲い始めている!
「もう君は
「アイツ……一階にいる人間を無差別に襲い始めました」
「だろうな。奴なら本命を食う前にゲーム感覚で周りの人間全員を順番に皆殺しにする」
「な、何でだよ……ッ! 俺を食うのが目的なんだろ!? なのに皆殺しって!!」
「最初に言っただろう?
「……っ」
「とにかく君はここにいろ。今からこの病室をアストラルギアフィールドで囲む。絶対安全ではないが時間稼ぎにはなるだろう」
「俺も連れてって下さい!」
「駄目だ。君の実力じゃ
「チョコは今一階にいます。もしそこで
「君が危険な目に遭うのだぞ?」
「俺の代わりにチョコが死ぬなんて嫌だ! せめて命の順番くらい俺が決める!」
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