第5話 謎解きは、いつも崖の上……✨✨

 僕は岬の突端に立っていた。



 時折り吹く風は冷たい。すっかり秋めいていた。



 背後に全身 真っ黒な男が現れた。


 黒いパーカーを着てニット帽にサングラス、真っ黒なマスクでまったく正体が解らない。



「よォ、ジャスティス❗」

 彼は僕を呼んだ。



「僕はジャスティスじゃないよ。

 ただ都市伝説に乗っかっただけだ」

 振り返って僕は男に会釈した。


 世間を賑わせる『謎の消失事件』に便乗しただけだ。



「おめでと。星野舞香と婚約したんだッて」

 

「ああ、お前のお陰だ。リョウ」

 黒いマスクの男は、風間リョウだ。


 僕らはグータッチをした。



「だよなァ、憧れの舞香と一発やれたんだ。

 本望だろう」



「フフ、馬場アキラみたいな事を言うなよ」

「だって舞香は俺たちのアイドルだからな」



「ああ、吊り橋効果ッて、ヤツさ」


「なるほどねぇ。緊急時、、極限に追い込まれると本能的に子孫を残そうとしてからな」



「ああ、死体を見るとしたくなるそうだ❗

 それも、全てお前が迫真の演技をしたからだろう。

 舞香が『あのフェイク動画』を信じたから」

 風間リョウが閃光に包まれて消失したように見えたのは、巧妙に仕掛けたCGだ。



 ジャスティスの名を騙ったメールもリョウが送ってきたモノだった。

 全ては計画通りだ。



「やっぱ天才だ。正義おまえに相談して良かったよ」



「別にィ、それより良いのか。リョウは❗

 このままだと失踪して七年後にはマジで、死んだ事になるんだぞ」



「ああ、これで借金に悩まされる事はない」


「そうか。けど、こんな大掛かりな事をしなくても自己破産すれば」


「法の盲点だよ。借金を本人じゃなく保証人からふんだくる❗❗ 初めからのさ。

 楽に返却とれる方から奪い取る。

 だから俺が消失すれば、これで借金もチャラだよ」



「ああ、ッで、どうするんだよ。これから」


「新しい身分証IDは手に入れた。風間リョウはからんだ」



「じゃ、これでもう二度と会うことはないのか」


「ああ、一生な。これが最後の別れだ」

 そう言うと後ろを向いた。


正義せいぎ❗❗ 舞香を幸せにしろよ」



「ああ、ありがとう。じゃァな」

 僕たちは、そこで別れた。


 もう二度と彼に会うことはない。


 


 彼は借金から逃れ、僕は舞香を手に入れた。

 




 最後は【正義】が勝つ。





 世の中、そう願いたいモノだ。













  THE END









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