第16話 対戦表開示
視線を感じる。
教室後方から授業中にも関わらず、ケンジやその取り巻きが俺を睨みつけてきているのだ。
(......なんだよ)
心なしかクラスの他の連中の視線も感じる気がする。黒岩が来て【二つ
しかし向けられる視線の質が若干異なる気はする。前までは明らかな敵意じみたものだったが、ケンジ
「嫌な視線ッスね」
隣に座る黒岩も視線に気がついているみたいだ。
「本当にな......俺、何かやらかしたかな?」
「残念ながら俺は何も知らないッス」
「だよなぁ......」
2人でコソコソと囁き合う。教師も教室内の異様な雰囲気と視線、そしてその視線の行き先は察している素振りを見せているが、何も言わない。触れたがらないと言ったほうが良さそうだ。
(本当に何があったんだ?)
そうこう考えていると2限が終わり、昼休みになった。いつも通り黒岩と中庭の木の下へ......
「伊織、どこへ行くのかしら?」
「どこって......わかってるだろ」
「外、見なさい」
「外......あっ」
窓の外を見れば、ざあざあと雨が降りしきっていた。そうだった。今日......と言うかここ1週間は雨が降り続きだったんだ。6月だしそれも仕方ないと言える。お陰で1週間近く【
「気が気じゃないのはわかるんだけどね。授業中、凄かったし」
「視線がなぁ......」
「俺まで居心地悪かったッス」
「私、いつも後ろに座ってるけど教室中が右前方の方を見てるのは一周回って面白かったわ」
「俺、何か不味いことでもやらかしたのかな......」
しかし本当に心当たりが無い。
「えっ......貴方、本気?」
「え?え?」
まさか預かり知らぬ所で何か......などと考えていると
「どうしたんだよ」
「今日、
「聞いてないんだが......」
「メールを見ないのが悪いわね」
「ごもっとも」
そして幻坂が端末を差し出してくる。そこにはずらりと上下に分かれたタイプのトーナメント表が映っていた。確か総勢64人だったか?
「俺の名前俺の名前......」
探そうと思ったが、探すまでもなくあっさりと見つかった。なぜなら俺の名前は......
「げっ、第一試合?」
そう。俺の名前はAブロックの1番右端、つまりは第一試合のところに記載されていたのだ。
「でもこれがどうかしたか?」
「対戦者の名前を見なさい」
そうだった。トーナメントである以上は対戦相手がいるんだよな。えぇと相手の名前は......
「風宮......賢治......ん?」
この名前、どっかで......ああ!?
「賢治、ケンジ!?まさかこいつ......!」
「そのまさかだよ平民上がり」
後ろから声がかかる。それは聞き慣れたようで聞き慣れない、ザラついた敵意の籠もった声......そう、初日に俺を殴り倒し、その後も嫌がらせを続けてきた憎き仇敵、ケンジのものだった。
「まさか初戦の相手がお前だとはなぁ。初戦突破は確実そうで安心したぜ」
「そりゃよかったな」
「あぁよかったよ。幻坂にはまぐれで勝ってたが......あんなの勝ちでもなんでもないか。まあ死なない程度に
そう言って大笑いし、取り巻きと共に廊下へと消えていった。
「......なんなんスかアイツ!?」
「まあ落ち着け。あいつの俺への当たりが強いのは今に始まったことじゃねえよ......なる程な、それで視線が」
「私としてはまさか貴方が確認してないなんて思わなかったけれどね......」
「それに関しては悪かった」
今後は情報収集もしていかなければならないだろう。
「それじゃ、行くわよ」
幻坂が廊下に向けて歩き出した。
「......行く?何処に?」
「聞きたいこと、あるんじゃないの?」
「聞きたいこと......確かに。あるな」
初戦の相手がケンジだと言うのなら......その情報は集めなければなるまい。
「聞きたいことはあるが、何処に行くんだ?」
「誰にも邪魔されないところよ。まあついてきて」
促されるまま、俺と黒岩は幻坂の後を追うのであった。
我らが才園寺学園は広大な敷地面積の中にありとあらゆる施設の詰まった学園だ。
その中でも1日の1/3を過ごす場所......即ち校舎も巨大の一言。校舎は3学年計12クラス全てに大講堂が割り当てられた上で一つの建物に集められている巨大な本棟、そして本棟から東西南北各1方向に存在する4つの特別棟の計5つの棟で構成されている。
ちなみに本棟は一階層に4つの教室が中央が吹き抜けの十字廊下で区切られるようにして配置されている。吹き抜けにはやたらとでかい螺旋階段が付いており、中央にエレベーターがある感じだ。
俺たちは今、その中の第1特別棟......通称東棟に足を運んでいた。
「東棟なんて初めてくるな」
「東棟は委員会の専用教室があるところだから委員会に入ってないと来る機会はあまりないかもしれないわね」
「あ、そうなのか」
「......知らなかったの?」
「いや、興味ないし」
「俺も知らなかったッス!」
「あんたらね......」
幻坂がため息をつく。そんなことを言われても知らないものは仕方がない。
「いい?今いる東棟が委員会の活動棟、西棟が部活動、同好会の部室棟、南棟が理科室とか家庭科室とかの専門棟、北棟が教員の研究室がある教員棟よ。覚えておきなさい」
「了解した」
それにしても棟ごとに区分けされてるとは......金があるところは違う。
「んで今は何処に向かってるんだ?」
「生徒会書記室」
「生徒会書記室?」
「......忘れてるかもしれないけれど、私の肩書は生徒会書記よ」
「つまり学内にある姉御の私室ってことッスか?」
「そう言うことよ」
「はえぇ......」
「生徒1人の、専用教室......」
やはりスケールが違う。
そのまま歩いていると、幻坂はとあるドアの前で立ち止まり、学生証をリーダーに当てた。するとピッと言う電子音と共に扉のロックが解除された。
「ここよ。入って」
幻坂が扉を開く。促されるままに俺と黒岩は室内に入る。そこは......
「す、凄えな」
見渡す限り棚、棚、棚。その棚の中にはこれまたびっしりとファイルが詰め込まれている。
「歴代の生徒会の議事録ね。今は全部パソコンで資料を作ってるから私の書いた議事録はここにはあまりないわ」
「それにしてもとんでもない数だな......何個あるんだ?」
「正確な数は知らないわ。でもこの学園は開校から100年以上経ってるしこのくらいあっても不思議じゃないわね」
「そう言えばここ、日本初の異能学園だったな」
思いの外歴史が長かった我らが才園寺学園。現学園長の
「それよりもさっさと話をしましょう。風宮の事、聞きたいんでしょう?」
「ああ。色々聞きたいことがある」
「適当に座って」
俺と黒岩は来客用と思しき対面型のソファに腰掛ける。
「それで、何を聞きたいの?」
「まずは......そうだな。端的に聞こう。風宮 賢治って奴は強いのか?」
最初はこれだろう。
「強いわ。間違いなく」
「だよなぁ......」
じゃなかったら取り巻きなんざいないだろう。
「私個人の目線で見ても厄介な相手ね。黒岩と同じく範囲系の異能よ」
「俺と同じッスか」
「ええ」
「確かあいつの異能は......風、だったか?」
同じクラスだし模擬戦の授業の際に何度か目撃している。彼の異能は自身の周囲に風を巻き起こし、それで相手を斬り付けると言うものだった筈だ。また風によって移動の補助も出来るようで、見ている限りだと非常に汎用性が高いと記憶している。
「正確には【
「【旋風】......」
端末から風宮の生徒ページを確認する。クラス毎に検索できるのは便利だ。
【
【
【
【
【
【二つ
【
【
「マジかよ......」
【
「【二つ
思いっきり格上じゃねえか......
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