第3話 異能模擬演習
あれから1週間が経った。
相変わらず周りからは悪意を持った視線が降り注いでいるが......初日のように理不尽な暴力を振るわれる、と言うことは無かった。
今日も今日とて外の木の下で惣菜パンを貪る。弁当を作るのは面倒くさいし朝早く起きなければならないからと思ってこうしているが、よく考えたら寮から学園の敷地外のコンビニまで片道徒歩15分。往復で30分も掛かるのは面倒だ。
しかし学園の敷地内の販売店は何というか......高い。オーガニックだか国産だか知らんがあんな高いものを食ってたら健康になっちまうよ(それでいいと思うが)。
懐から一枚の紙を出す。
「............」
それは学園長からもらった10億8000万の小切手だ。調べてみたら銀行に持っていけば換金出来るみたいなんだが......これを手にした瞬間人生が狂ってしまうのでは無いかと危惧してまだ換金していなかったのだ。
「まぁこのまま持ってても心臓に悪いし放課後にでも換金してくるか......」
そもそもが慰謝料兼示談金だ。恩を売ったわけでも買ったわけでもないし貰えるのなら貰っておくべきだろう......さては一生働かなくてもいいな?
聞けば家の中のものは全て別の場所に保管してあるらしい。家族の遺品と仏壇に関しては初日の夜に郵送されて来たから一安心だった。
「さて次の時間割は......っと」
ポケットから学園長からインカムと共に支給された生徒用の端末を取り出す......と言っても機能自体は最新モデルのスマートフォンとほぼ同じらしい。なんでも情報漏洩を防ぐ為に今までの交友関係を断たなければならなかったとか。
別に今の時代SNSで検索すれば前の学校の奴らとくらい連絡を取れなくは無いが......まあそんな事をするメリットも無いし、何より監視が怖い。
スマホに初期導入されていた学園独自のアプリを起動する。此処からは時間割や課題、連絡事項に留まらず校内の上位ランキングや生徒の表層的な情報を閲覧出来る様になっている。
ちなみに校内のランキングとは、年に2回行われる生徒たちが【#異能者__イクシーダー__#】としての技量を競い合う『#校内戦__ランキング__#』の順位によって決定されるものなのだそうだ。
「......げ、異能模擬演習?」
字面がもう嫌な予感しかしない。教科説明を読むとその予感は的中した。
「『異能を用いた決闘形式で戦闘演習を行う事で、自身の異能を熟知し、戦闘能力を向上させる』......だ?ふざけやがって......」
大体俺は自分の異能すら満足に扱えない......と言うかそもそも俺の異能は使い道がよくわからない能力なんだよな......
「まあしょうがない、見学にしてもらうか......」
実際異能自体に興味はある。生で異能を見れる機会なんてそうそう無いからな。いい機会だと思おう。
「見学ですか?どこか体調でも」
「あー、いや、ちょっと頭痛が酷くて......」
「それは大変ですね。
「へ?」
白衣を纏った美人の先生がこちらへ歩いて来る。見た感じ......保健員?
「はぁい。小手川くん、頭出してね......【
彼女が右手を俺の頭に
「良くなった?」
この口振りからすれば彼女は治癒系の能力を持つ【
「は、はい、良くなりました」
「演習、頑張って」
「頑張ります......」
酷く憂鬱だ。こんな事なら授業自体ブッチしてしまえばよかった。
何が憂鬱って確実に笑い物にされる事だ。正直誰が相手でもボッコボッコにされる気がする......せめてケンジとその取り巻きだけはやめて頂きたい。
トボトボと体育館......と言うかドーム内の通路を歩く。
この学校はいちいち全てが巨大で、集合場所の『第二体育館』を案内板頼りに探してみればまるで東京ドームの様な巨大建築物があり、何度も表記を確認したが間違いなく此処が第二体育館らしい......才園寺学園の資金力、えげつねぇ。
ドーム型と言うところからもわかる通り1階部分が平地になっており、二階以降は平地を取り囲む様に観客席が敷き詰められている。つまり俺が誰かに虐殺されるのは360度全方向から観れると言うわけだ......泣いちゃうぞ?
取り敢えず3階部分のスタンドに腰掛ける。殆どの生徒は2階部分に座っているので周りに誰もいないのは気楽で良い。
座ってぼけっとしていると、耳につけたインカム型デバイスからピピッと音がした。
先にも言った通り携帯端末と一緒にインカム型の端末も支給されている。これは学外でも使える生徒や教師間で迅速にやりとりをする為のデバイスであり、指定範囲への一斉通信や予め設定しておけば目的の人物とインカム1つでやり取りできると言う優れものらしい。
『そろそろ時間なので挨拶を省略し、模擬演習を開始します。端末に対戦順、相手を送信しましたので確認して下さい』
なるべく早めが良いなと思いながら端末を開いて確認すると、そこには
【17:#幻坂__ほろさか__# vs 小手川】
と記載されていた。
「幻坂......あいつか......」
対戦相手の名前をタッチするとその人物の個人データの一部を閲覧することが出来る。恐る恐る確かめてみると......
【
【
【
【
【
【二つ
【
【
......二つ名?何だそれ?
加えて異能関連の項目が閲覧不能になっている。
いや問題はそこじゃない......いや十分問題なんだが、1番恐ろしいのはその
学園長から聞いた話だが、【
1つが【異能者】本人の能力評価である【
そしてもう1つが異能自体の能力評価評価である【
その【能力値】と【異能能力値】のデータと実績を総合してつけられるのが【
全ての評価は英字で示され、基本的にSからFまでの7段階で評価される。稀にその評価に当てはまらないとしてSSの評価を受ける者もいるらしい。
幻坂の【
加えて【#特記事項__スペシャル__#】には爛々と輝く【生徒会書記】の文字。どれだけハイスペックだよ。
ちなみに俺の【能力値】は【体力 B 知力 C 発想 - 運 E 精神力 - 】、【総合評価】に至ってはFだ。体力知力運に関しては以前の学校までのデータで作成したのだろうが、発想と精神力は測れなかったと言うところだろうか。なんにせよ比べるべくもないのは明白である。
前、彼女は俺がケンジに踏まれそうになった時に介入してきてくれたが、その時ケンジに【幻想姫】と呼ばれていたのを思い出す。
なによりも目を引くのはその校内順位だ。2位と言う事は事実上この学園で2番目に強いと言う事であり、上には1人しかいないと言う事でもある。
「化け物じゃねえかよオイ」
これ本当にランダムで組み合わせ決めてるんだよね?教師からのイジメじゃないよね?
「......憂鬱だ」
俺の初戦は......華々しく散って終わりそ
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