第8話
次の日の夜、僕は昨日起きたことに関して考察をすることにした。これまで、なにも考えずに物に触れていた時はかするどころか触れることもできずに空をきっていたものが、足のような感覚を意識して蹴り上げただけでスウェットを2回も蹴り上げることに成功した。
これまでとの違いに関しては分かっているが、なぜそれだけのことで結果に大きな差が生まれたのかが分からない。そしてもう一つ、夜になると足があるかのような感覚はあるが、手の方の感覚は日が出ている時とそこまで変わりない。
今、足は物に触れることができたが、手は物に触れることができるのか。この疑問の答えによっては美沙の心の問題に対してなにができるかが大きく変わってくる。
もしも手を使うことができるのなら、彼女の生活に少しでもいい影響が与えられるのではないか。これまでみてることしか出来なかった自分が美沙の支えになれるのではないか。だから、一刻も早くこの疑問を解決しなくてはいけない。
昨夜と同じ深夜1時、とりあえず昨日はできた物を足で蹴るということから試していく。勢いよく振った足は床に落ちていた美沙の洗濯物を無事蹴飛ばしてくれた。
「よかった。昨日だけできたわけじゃなかった。問題は、物に手で触れることができるかだな」
蹴飛ばした洗濯物をもとに位置に戻すため、手を伸ばして掴もうとする。これまで通りならばこの手は洗濯物をすり抜けてそのまま宙を掴むはずだ。うまくいけば、この手は洗濯物をつかんで元の位置に戻すことができる。
「うまくいきますように!」
そう言って伸ばした僕の手は洗濯物に指をかけることができた。
「やった!!物に触ることができた!」
物に触ることができて舞い上がっている僕。しかし、喜ぶのもここまでだった。
「あれ、落としちゃったか。」
そう言って洗濯物を拾い直して元の位置に戻そうとする僕。拾い直して10秒後、再び洗濯物を落としてしまった。
「⋯⋯久々だからかな。しっかりもてないな」
何度拾い直しても落とさずに元の位置に戻すことができず、何度も落としてしまう。あまりに回数が多いのと、決まって10秒前後で落としてしまうため、否が応にもある結論に至ってしまった。
「もしかして、10秒以上持ち続けることができないのか?」
そう考えるとさっきから何度も洗濯物を落としてしまうことにも納得ができてしまう。
この幽霊の体で物を持てるのは10秒で、それ以降は体が物をすかしてしまう。
成功か失敗かなんとも言えない結果である。物を持つという意味では成功と言えなくもないが、しっかりと持てるようになるという意味では10秒ですかしてしまうため、持てるとは言いにくい。
渋い顔をして落とした洗濯物の横に座り込む。果たしてこれは成功といっていいのか。物に触れる方法は分かったが、まだまだ前途は多難であるようだ⋯⋯。
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