少女の行方

「はあぁ、はあぁ」




 少女は走った。とにかく全力で走った。




「待てえ!!」




「この魔族が!!!」




 少女を追いかける冒険者たち。彼らは見るのも恐ろしい武器を持っていた。




(助けて!! 誰か!!!)「誰か!!!!」




 少女は心でそう叫んだ。必死になって叫んだ。だが……




「へっ!! 今だ!! 詠唱を唱えろ!!!」




「うっ!!!」




 少女の前に二人の魔術師が現れる。




「神よ、どうか――」




「くっ!!」




 少女は詠唱の中、方向転換してまた走った。だが……




 ガンッ!!!!




「う、嘘……」




「異能の力を我らに与えて――」




 少女は絶望した。いつの間にか<神による魔力領域マイフィールド>が展開されていた。


 これで彼女はこの空間から出られなくなった。そして……




「邪悪なるかの者の魂に裁きの光を!!! <神による光ライト>」




 少女は彼らの光によって――






 ※※※※






 ケヴィン様が来てから二か月が経った。




「おいミカ。今日も頑張っているか?」




「はい、ギルド長!!」




「その呼び方はやめろ。俺は魔王 ケン・アルベルトだ」




 私は魔王城ケン・アルベルトのところで笑顔で元気に働いている。そして私は今……




「では魔王様、今日も頑張っています!!」




「そうか、なら俺のために頑張るが良い」




「はい!!!」




 懸命に掃除をしている。正確にはギルドの受付の前を雑巾で床を拭いている……って




「なんで私掃除してんの!!!!」




 私は雑巾を床に日頃の鬱憤と共に叩きつけた。


 そして、私はケンに再び問い正す。




「なんで私掃除しているの!!! 私はあなたと冒険できると思ったからこのギルドに入ったのに!!!」




 私はギルド長室に足を運んでケンの目の前にある机を怒りとともに叩きつける。




「だから、昨日も言っただろ?? 今、俺のところに依頼書が来ないのだと。あと、ここでは俺の方が立場が上だから敬語で話せ」




「それは昨日聞きました!!! でも、依頼書が無くても冒険できるでしょうが!!!」




「ああ、そうだ。だが、俺が動けば他の冒険者が睨んでくるからな……。さすがに彼らの生活費を削減してでも冒険はできん」




「なら、私に魔法を教えてよ!! ケヴィン様の話なら私、あなた以上の魔力があるって!!」




「だからそれは昨日も言っただろう……。お前にはまだ早いと。それに、お前はここにある魔法書を読んだのか?」




「読んだわよ!! でも、どれも私が知っている魔法書だらけで何一つためにならないのよ!!」




「なら、それはお前の勉強不足だ。もう一度、読み直せ」




「だから、魔法書はもう全部読ん――」




「嫌なら掃除してろ。いいな??」




 そうケンが強く言った。私には彼のその睨む目に言い返すことができず




「……わかった」




 と答えた。


 こうやって毎日喧嘩している。




 何よ!! こんなきつく言ってほんとに!! 私を誘ったのはケンじゃないの!!


 これじゃあ、まるでケヴィン様みたいじゃない!!




 私はそう苛立つながらまた雑巾を手に取る。








「ふう、終わったあぁぁ!!」




 夜、私はこのギルドの隅から隅まで掃除をした。


 そのおかげで、床に大きく寝転がれる!!




 私は掃除が終わったことで気分が良くなっていた。そして、彼の言葉をふと思い出す。




『魔法書をもう一度読み直せ』




 この言葉にまた苛立ついた。


 でも、彼はなぜこのような言葉を言ったのだろう。




 私はギルドに入ったとき魔法書をすべて、隙間なく読んでいた。


 それはもちろん、ケヴィン様のお役に立ちたかったから。


 でも、私は結局魔力を使えなかった。




 我に振り替えてみる。


 彼は私に何を思って読み直せと言ったのか。




 そう思った時、私はギルドの受付の横にびっしらと置いてある大量の本を見てみる。


 そして、一つの本を手に取った。




 もう一度読んでみよう。




 私は本を一ページめくった。でも、やはり私が知っている魔法ばかり載っている。




 やっぱり読むの止めよう!!




 と思って魔法書を閉じる。でも、私はまた本を開いていた。




 なぜ私が魔法が使えなかったのか知りたかった。




 私はまたろうそくが灯っているテーブルに行き、魔法書を読み進めた。








 やってしまった。




 本を読んでいるうちに気づけば朝になっていた。




「おはようございまあす」




 一人の受付の人が挨拶してくれた。私も「おはようございます」と言葉を返す。




 今日は受付の人が休みではなかった。


 よかったあ!! いつもなら受付の人がいなかったら私が受付をしていたから本当に助かった。




 私は眠気を背負って自分の部屋までいく。




 バアン!!




 ふかふかなベッド、私はそこで思わず寝転がっていた。




 はああ……。気持ちいい……。




 そして、私はそこで少しの仮眠を取った。

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