強引な魔王
――これは人と人を脅かす者が長きにわたり、自由を求めた永遠の物語。
魔王、それは魔族や魔獣の頂点に立ち、人だけでなく妖精や獣人、そしてこの世界を創造した神々までもが恐れる凶悪な存在であり、今、世界を支配しようと企んでいた。
それを防ぐため、三人の勇者が神々の名により立ち上がる。
人間の勇者、すべてを断ち切る聖剣を自在に扱い、人間のためにすべてを投げ払う勇敢な戦士。
その名はケヴィン・レイス。
妖精の女王、すべての魔法を操り、あらゆる不可能を可能に変える魔力を持つ真の女王。
その名はエリー。
獣人の王者、驚異的なパワーを持ち、強靭なその背中ですべての獣人を率いる希望の象徴。
その名はリオ。
もう一度言おう。
これは魔王がいる限り永久に終わらない物語。それでも尚、彼らは自由を求めて美しくそして儚く戦い続ける。
――というのは全て真っ赤な嘘である。
※※※※
「久しぶりだな……。ケヴィン!!」
「黙れ!! 不滅の魔王 ケン・アルベルト!!!」
聖剣を素手で!!
私は何が起こっているのか全くわからなかった。
ケヴィン様が魔王と衝突したと同時に英雄パーティーの皆が私たちを囲む。
「なあ、ケヴィン。これはどういうことだ? 今のお前では俺を倒すのは不可能だと思うが」
「だから俺はお前を見つけたと同時に仲間を呼んだ」
「……」
魔王は黙る。それと同時に英雄パーティーメンバーの一人を見つめた。その女の子はおびえていた。
そして、ニヤリと笑った。
「そうか……。お前が言う仲間はこの程度か……。ならば!!」
魔王はケヴィン様から姿を消す。それと同時に彼女の目の前に現れ、彼女はすでに倒れていた。
「おい……。アニーに何をした!!!」
ケヴィン様は怒った。こんな姿を見たのは初めてだ。
「何って、俺はただ彼女の意識の波長の山を当てただけだが……。そう睨むな、ケヴィン。彼女は死んでいない」
「くっ!! この魔王が!!!!!」
ケヴィン様は聖剣を強く持ち、魔王に襲い掛かる。
「<
彼はもう一度、大きく縦に剣を振るう。
「はあ……。だから、俺は彼女を殺していないと言っているだろ!!!」
魔王は襲い掛かるケヴィン様を半身で避け、頭をつかんだ。それと同時にそのまま彼を地面にたたきつけた。
地面ににヒビが入る。ケヴィン様の手から聖剣が離れる。
魔王は立ち上がる。そして、彼は英雄パーティーに向けてこう大きく口に出した。
「おい、お前ら!! お前らのリーダーは今、意識を失っている!! よってお前らは今すぐケヴィンとこの娘を連れてこの場を去れ!! さもなくばお前らをこの暗闇の森で死ぬことになるぞ!!」
魔王の言葉は恐怖そのものだった。
英雄パーティーの皆は速やかに二人を抱え、私たちの目の前から消えて行った。私を置いて。
「それで、お前とこれから付き合うのだが、お前はここで一体何をするつもりだ?」
魔王が訊いてくる。でも、私は顔を暗くなっていた。
「おい、貴様。俺はお前に何をするかを聞いているのだ」
「な、何って……」
魔王は私に疑問の眼差しを注ぐ。
私がやっと顔を上げた。そして、涙目になってこう答えた。
「何って!! そんなもん英雄パーティ―を永久追放されたからに決まっているからでしょ!! う、うわあああああああん!!!」
堪えていた涙が一気に弾ける。
「なぜ、永久追放されたことになる?」
魔王が再び訊いてくる。
なんて無神経なの!!
と思いながらも私は涙を引っ込め、彼の問いに苛立ち気味になってこう答えた。
「ケヴィン様があなたのことを魔王って言った!! あなたのそばに私がいることはもう知っている!!
つまり、私とあなたが手を組んだと思われてもう英雄パーティーには戻れない!! わかった!!??」
魔王は顎を触る。私は彼の姿を見て頬が自然と膨らんでいた。
すると、彼は私にこんな提案をしてきた。
「ならば、俺のギルドに来るといい。一人ぐらいなら寝泊まりしても大丈夫だ」
は? 何考えてるの?
「あなた、バカなの? 今、あなたのせいで居場所が無いのに」
「だが、今ここでお前を野放しにすると確実に死ぬ。お前、立てるのか?」
彼が手を差し伸べる。
そんなもん簡単よ!!
と思いながら自分で起き上がろうとする。
あれ? なんで立てないの?
腰に力が入らない。この姿を見て魔王はこう言った。
「やはり、お前はゴブリンとの戦闘で疲れ果てている。だから」
魔王は私に近づく。
彼は仮にもケヴィン様の言うことが本当なら魔王だ。何されるかわからない。
私は目を閉じる。すると、私の体は地面と離れた。
私は目を開ける。そこには彼の顔があった。
私は周りを見渡す。よく見ると、私は彼にお姫様抱っこされていた。
「ちょっ!! 何するの!!」
魔王はこう答える。
「どうせ貴様は、俺の言うことを聞かない。ならば、俺は強引にでも連れて行くことにした。それだけだ」
私は振りほどこうと必死に暴れる。と思いたいけど私には今そんな体力は無かった。
こうして私は羞恥心を背負いながらも彼のギルドで一泊泊まることになった。
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