英雄パーティーに追放された私は世界を脅かした魔王に拾われるのであった
六月
魔王のいない世界で
「これで魔王は完全に滅びた!!」
人間の英雄は民衆にそう豪語した。
その高々と上げた剣にはしっかりと魔族の証である黒色の血がくっきりと残っていた。
そんな彼を見て、私は彼のパーティーに入りたいと思った。
彼は魔王軍の残党と魔獣討伐などの仕事でまだ冒険者をやると言った。つまり、私にもパーティーを入ることができる。
だから、私はたくさんの修行をした。え? 何の修行をしたって?
それはもちろん、剣でしょ!!
――十二年後
「不合格です」
「……え?」
私は英雄が所属しているギルドに足を運んだ。そしてすぐギルドに加入面接を受けた。
英雄パーティーに入りたい私はギルド長の口から「自分の突出した何かを見せてください」と言うのでギルド長とともに外に出て私の剣技を見せた。でも、ギルド長に私を必要とする眼差しがまるでなかった。
「あなた、剣の腕を見たところ何も基礎ができていません。その剣ではあなた、魔獣どころかあなたの希望しているパーティーのリーダー、英雄の足を引っ張るだけですよ」
「で、でも私は魔獣を倒せました!!」
「何体?」
「……一体」
「魔獣の名前は?」
「……ゴブリンです」
「これでわかりましたね? だからあなたは不合格なんです。なので、今すぐここから立ち去って下さい」
「……わかりました」
私は何も言い返ずにその場を立ち去ろうとした。その時だ。
「待ってください! 僕は彼女に興味があります」
「ケヴィン君!!」
面接室の扉を強く開け、誰かが乱入してきた。その人物に私はふと手で口を覆う。
何度も苦難を乗り越えた跡が残る鎧、腰につけ誰もがそれに勇気を与えてくれた魔王を倒した二大聖剣アルファメイデン、間違いない!! 彼はすべての魔族を駆逐した最強の英雄、ケヴィン・レイスだ!!
「何故だ、ケヴィン君。君も外で彼女の剣技を見てただろ?」
「はい、そうで――」
「見ててくれたんですか!!!」
私は英雄に見てもらったことがなによりうれしくて彼に大きな声を出した。
彼はニコッと笑う。
「それじゃあ君は何を見て彼女に興味を持ったのかね?」
「ギルド長、あなたは気づかないのですね」
「何かだね?」
英雄は私のもとに駆け寄る。
え? なになに?
私は胸が高鳴る。すると英雄は私の顎を持ち、私にこう言った。
「彼女には、凄まじい魔力を感じる。それもこの世界を脅かした魔王以上の魔力を、ね」
「何言ってるんだ、君は。彼女に魔力なん――」
「持ってますよ、彼女は。でも、まだその魔力は開花してないだけ」
「な、なんだと!!」
ギルド長は驚いた。それに私も同調する。
と言いたいところだけど、私は憧れの英雄の顔がすぐそこにあるため顔が熱くなる。
「それで、君は彼女をどうするんだ?」
ギルド長が英雄に訊いてくる。彼はすぐに答えた。
「それはもちろん僕のパーティーに入れますよ!!」
「え!!」
私は思わず口が出る。ギルド長は『やれやれ』と言った表情で彼にこう言う。
「まあ、君の自由だ。好きにしてくれ」
「ありがとうございます、センクさん」
「私でいいんですか?」
私はまだ信じられない状況だったからまた口が出る。
英雄はニコッと笑い
「ああ、もちろんだ!!」
と答えてくれた。
やった!! やっと私は彼のパーティーに入れる!!!
こうして私は念願の英雄パーティーに入ることができた。
――三か月後
『ガルララララララ!!!』
「おい、新人!! 何してる!! 早く魔法を唱える準備をしろ!!」
「す、すいません!!」
対魔竜戦。
私は英雄パーティーのもとで今はサポート役に回っていた。
「今だよ!!」
「はい!!」
英雄に言われると、私は一度息を大きく吸う。そして、静かにゆっくり息を吐いた。
「神よ、我らにどうか始まりの火を邪悪なるかの者に与えたまえ!! <
魔竜――魔獣の一種で、魔王が飼いならしたドラゴンの一匹だ。こんな奴らが複数にいる。
私はその地面に這う魔竜に詠唱する。でも、何も起こらない。
「あ、あれ? どうして? ちゃんと祈ったのに……」
「新人!! 何やってる!! 上を見ろ!!」
「へ?」
私は真上を見上げる。すると、そこには強大な火の玉が私に迫っていた。
震えて体が動かない。
「そこでじっとしといて」
英雄の声が聞こえた。私はその声で安心する。
「聖剣よ、我らにどうか希望を与えたまえ。<
英雄は私に襲い掛かる火の玉を、さらにこのまま魔竜の首までも真っ二つに斬った。
※※※※
「前日は、本当にありがとうございました!!」
対魔竜戦の後、私はギルドでケヴィン様にお礼をした。すると、彼は深刻な顔をする。
私は彼のその顔をみて、首をかしげる。
しばらくしてケヴィン様は自分の顔を二回ほど叩き、私の方に真剣な眼差しをする。少し私は顔を赤くなる。そして、彼から私にこう告げた。
「君、急で悪いけど僕のパーティーから抜けてもらえないかな?」
「……え?」
私は何が起こっているのかわからなかった。
「ど、どうして?」
私は唇を震わせながら彼に訊く。
「君は確かに魔王以上の魔力を持っている。でも、君は僕がパーティーに誘ってからいつ魔力を使ったのかい?」
「いいえ……」
私はそう返事するしかなかった。
「だよね。だから、これ以上君の面倒は勘弁だ。ここか――」
「で、でも!!」
思わず声が出てしまう。
ずっとあなたのパーティーに入りたくて努力したのにこのまま抜けるなんて嫌だ!!
「私はまだやれます!! この三か月間ギルドにある魔法書を読んで、たくさんの魔法を覚えました!! だから私はまだたたか――」
「もういい!!」
彼は顔を暗くしてギルド上に響きわたるぐらい大きい怒声を上げた。私はぎょっと固まる。
そして、英雄は顔を上げて本心を告げた。
「君のために言ってるんだ!! もうこれ以上……僕の目の前で死なないでくれ……」
彼は私の目を合わせた。彼の目は悲しみに満ち溢れていた。
私はショックのあまりギルドをとび出してしまう。
どうして…… どうしてよ!!
※※※※
私はギルドをとび出した夜、一人で森にいた。
一体でも多く魔獣を倒せば、もう一度英雄パーティーに戻れる!!
でも夜は危険だ。大概の魔獣が夜行性だからだ。
それでも私は戻るために魔獣を探した。
いた!!
目の前にゴブリンがいた。これなら私も倒せる。
私は素早く剣をとる。今は魔力を開放してないので剣で挑む。
ゴブリンが背後を見せる。今だ!!
私はゴブリンに向かって走る。そして剣を大きく振るった。
だが、ゴブリンは半身になってかわす。それと同時に手で私の首を絞めた。
どうして? 背後は完全に隙があったのに!!
奴は持っていた棍棒を握る。
ヤバい!! このままだと確実に!!
私は必死に足をバタバタと動かした。
でも、ゴブリンは動じない。
そんな時だった。
一人の冒険者らしき人物が足音を立てずにこっちに向かってくるのが見えた。
その冒険者は何故か目が腫れていて薄着で腕が細く、どう見ても戦えるような体つきでは無かった。私好みのイケメンだけど。
へらへらしているゴブリンは何も気づかない。
冒険者はゴブリンすぐそばまで来ていた。ゴブリンが殺気を感じ、彼の方に向いた。
すると、
グシャッ!!
彼は素手でゴブリンを上から叩き潰した。
私は一度倒れ、ゴホゴホと息を吹き返した。そして私は立ち上がる。
「助けていただ――」
「お前はバカか?」
え?
私は彼のさわやかな顔と裏腹の言葉が出たことに驚く。そして彼は上から見下ろすようにこう私に訊いてきた。
「何こんな真夜中に森にいるんだ? 貴様は魔獣が夜行性だという事実を知らないのか?」
私はこう即答する。
「知ってます!! でも、私は今ここで強くならないといけないんです!!」
私は彼に強く言った。彼は私を強く睨む。
そんなことされたも、私は真剣になって彼の目をじっと見つめた。そこだけはどうしても引けなかった。
少し時間が経った頃、彼はこう口を出した。
「……ふむ。お前はどうやら訳ありのようだな。ならば、俺はお前に付き合ってやる。と言いたいところだが……」
彼は何かを言いかけ、顔を左に向ける。私は彼に連なって顔を右に向けた。
すると、森の茂みから出てきたのは冒険者だ。そして、彼に剣を縦に大きく振るった。
だが、彼はその剣を片手で受け止める。周囲にとてつもない風圧が飛び交う。
そして、彼は冒険者にこう言った。
「久しぶりだな……。ケヴィン!!」
「黙れ!! 不滅の魔王 ケン・アルベルト!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます