04

 校舎に入った。


 下駄箱から、階段を駆け上がる。


 監視カメラは、昨日の段階で確認済みだった。見えるところには、誰もいない。だれもいないはずだった。


 教室。


 この教室の監視カメラも。確認している。誰もいないはず。


 扉。開けた。


 鍵が空いている。


「どこだ」


 探した。


 彼女の、席。昨日、散々かき出していた机。その下に。彼女がいる。


「あ、ああ」


 こちらを見つめて。声にならない声を、出している。


 駆け寄って。


 首をさわって気道と拍動を確認。


 身体をさわって、外傷の確認。


 大丈夫。


「よかった。大丈夫だ」


 抱きつかれた。やはり、震えている。


 違う。


 震えているのは。


 彼女だけじゃない。


「今か。今なのか」


 無線を入れた。


「いま俺は校舎内にいます。取り残された人間が1名。さっきアナウンスした彼女です。そして、校舎の倒壊が始まっています」


 震えている。彼女も、校舎も。


 このままここにいたら、まずい。


「校舎倒壊まで時間がありません。今から彼女を抱えて下に行くよりも、倒壊の瓦礫の影響が少ないヘリによる吊り上げを行います。ヘリ。応答してください」


 ヘリが、応答する。


「屋上まで上がります。ロープをおねがいします。ここから光のサインは確認不可です。こちらを確認したら連絡を」


 ヘリ。了解という無線。


「よし。ごめんね。まず、ここから出ないといけない。こわいかもしれないけど、ちょっとだけ我慢してくれ」


 彼女を、背負った。


 屋上まで、駆け上がらないといけない。

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