第2話:土下座
聖女マリーナの前には、国王と王妃と王太子だけではなく、その時王城にいた、傍系も含めた全王族が勢ぞろいしていた。
それもただ集まっているのではなく、東洋で言う所の土下座、叩頭の状態で謝り続けていたが、マリーナは愛しい息子アンリを抱いたまま黙っていた。
その沈黙と無表情が、王族達を一層の恐怖に叩き落としていた。
この雰囲気に耐えきれなくなった王太子シャルルが、本当は悪いと思っていないのに、また同じ詫びの言葉を繰り返した
「ああ、すまなかったマリーナ、出来心でついやってしまったのだよ。
たった一度の過ちな、ギャッフ、ウギャアアアアアア」
嘘を繰り返すシャルルの口から血が噴き出していた。
大きな音と共に全ての歯が吹き飛び、舌が引き千切られた。
後方に吹き飛んだシャルルが激痛に床をのたうち回っている。
痛みで叫ぼうとしているのだが、歯も舌もないので絶叫にはならず呻き声だけだ。
そんな姿をマリーナは冷ややかな目で見降ろすだけだった。
その光景を見た王族達は、自分達の運命を、いや、シャルルを呪った。
「今のは、神の天罰です。
売春婦からおぞましい病を移されたにも関わらす、私に近づこうとしたからです」
全王族が絶望の呻き声をあげ、同時にシャルルを罵り呪いました。
ですがもう全て手遅れで、神の断罪は決定しているのです。
「神に浮気をしないと誓ったにもかかわらず、シャルルは浮気をしました。
それも、私が何も言わないのをいいことに、百度もです。
しかも、事ここに至っても、百度を一度を言って神を欺こうとしました。
もう神の怒りは限界を超えてしまいました。
王族だけでなく、王家が滅びる事でしょう。
ただ私も腹を痛めて生んだ子は可愛いので、屑の血を受け継いでいるとは言っても、アンリが殺されるのを黙ってみているわけにはいきません。
アンリは守り抜きますから、王家の血は残るでしょう。
それだけは安心されてください」
そう言い捨てると、マリーナは部屋を出て行こうとした。
このままでは皆殺しにされてしまうと、王族達は土下座したままマリーナに近づき、声高に請願哀願したが、もうそんな事は許されなかった。
声を出した者は、シャルルと同じように口が破裂し舌が引き千切られた。
手を出して引き留めようとした者は、その手が粉々に吹き飛んだ。
そんな姿を見ても、マリーナは全く表情を変えなかった。
「そうそう、王侯貴族の方の中には、シャルルと一緒に売春宿で愉快に過ごされた方がたくさんおれらますよね?
そんな者を野放しにしておいて、神に許しを請うなんて、身勝手過ぎるでしょ?」
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