第372話 パパ活とか、いっちょんすかん!


 俺はほのかのせいで、かなりBLの影響を受けていた。

 常に脳内で、ミハイルとの絡みばかりを想像してしまう……。

 もちろん、裸体でだ。


 ほとんど、彼が攻めになってしまうが、知識が乏しいので、寸前で行為を止めてしまう。

 それがまた初々しくて、愛らしい。

 自ずと、俺の股間は爆発寸前であり、常にカチコチ。

 机に擦りつけて、どうにか午前の授業を終わらせた。


 名誉は守られたのだ……。

 しかし、元気すぎる股間のコイツは、未だに沈静化してくれない。

 お昼休みに入り、ミハイルが「一緒に弁当を食べよ」と言ってくれたが、トイレに行くと告げて、逃げるように教室から出ていく。

 前のめりで、コソコソと廊下を歩いていると……。


 全日制コースである三ツ橋高校の制服を着た女子高生が目に入った。

 一人は活発そうな、ボーイッシュなショートカット。

 赤坂 ひなただ。

 その隣りで喋っているのは、チャラそうな小ギャル。

 派手なピンク色に染め上げた長い髪を、後頭部で1つに丸くまとめている。


 真っ黒な頭のひなたとは、大違いの校則違反だ。

 化粧も濃ゆいし、カラコンやつけ爪。

 どこかで見かけた顔だな……。


 一生懸命、思い出していると、ひなたが俺に気がつき、声をかけてくる。


「あ、センパ~イ! 久しぶりですね♪」

 偉くご機嫌に見えた。

 ニコニコと笑って、俺に手を振る。

「おお……久しぶり」

 なんでか、分からないが……ひなたの姿を見た瞬間に、股間の熱が冷めてしまった。

 治まったことから、良かったんだけども。

 女を見ると、沈静化するコイツって、一体……。

 

「今日はスクリーングですか?」

「まあな……そうだ。ひなたに実は頼みたいことがあるんだ。お前の写真を何枚か、撮らせてくれないか?」

 今度の小説に使うモデル写真のためだ。

「え、しゃ、写真!? 私の身体を撮って、ナニをする気ですか!?」

 俺が答える前に、右の頬を一発、平手打ち。

 ひなたの得意技ですね。

「いって……」

「そ、そういうことは、付き合った恋人同士がするもんですよ!」

「ひなた。お前、なにを勘違いしているんだ……」

 頬をさすりながら、呆れていると、近くに立っていたピンク頭の女が間に入る。


「ひなたちゃん。スケベ先生はそういう意味で、言ったんじゃないっす。小説のためっす」

「え……小説? ていうか、なんでピーチちゃんが、センパイのことを知ってるの?」

 思い出した。

 俺のコミカライズを担当した新人漫画家、筑前ちくぜん ピーチだった。

 ちなみに、ラノベ版の絵師。トマトさんの妹でもある。

 そういえば、三ツ橋高校に通う現役JKだったな……。


「自分っすか? スケベ先生とは、ただのパートナーっすよ。恋愛感情とかないっす。昔から推してる人なんで」

 勝手に二人で話を進めだした。

 ていうか、スケベ先生ていうの、やめてよ。

「ぱ、パートナー!? 恋愛感情がないのに? それに昔からって……何年前から?」

 あら、ひなたってば、また勘違いが暴走してない?

「えっと……スケベ先生とは、インターネット上で出会って、確か10年ぐらい前からだったと思うっす。自分が一目惚れして、勝手に推してるんで……。マジ、リスペクトしてるっす」

 それを聞いたひなたは、何を思ったのか、肩を震わせて、拳を作る。

「じゅ、十年前って……ピーチちゃんが幼女の頃じゃん」

「そっすよ。スケベ先生はマジでカッコイイんで。自分は人生を捧げてもいい、って思えるレベルっす。身体をボロボロにされても、余裕っす」

 と親指を立てるピーチ。

 彼女が話すことは、全て創作活動におけるものだが……。

 ひなたにとって、勘違いを更に助長させてしまう、説明になってしまったようだ。


 顔を真っ赤にさせて、俺の方に顔を向けると、ギロっと睨みつける。


「センパイ、最っ低!」

 そう言って、腫れてない方の頬をもう一発、平手打ち。

「いってぇ!」

「幼女の時からパパ活するとか、この超ド変態のロリコン! 死ねばいいのに!」

「えぇ……」

 

 こいつも想像力が豊かだなぁ。

 ていうか、ひなたに会う度、殴られている気がする。

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