第347話 お医者さんごっこ、したことないです……。


「タッくん~ 横になってくだちゃいねぇ~」

「はい」


 突如として、ヤンキーミハイルに降臨なされた女神人格。

 アンナ様により、俺は甘い香りが漂うベッドの上に寝かされる。

 枕はピンク色のネッキーとネニーがプリントされた可愛らしいデザイン。

 布団やシーツも同様の色とデザイン。


 ミハイルはいつもと違い、長い髪は首元で括っておらず、両肩に下ろしている。

 それもあってか、妙に色っぽく感じる。

 正直、俺にはこいつが女にしか見えない。


 ベッドの上で寝る俺の隣りに、正座して座るミハイル。


「さぁ、どこが痛いのかなぁ? お医者さんに見せてくれるかなぁ☆」

 素晴らしい。

 このナース、どこで雇えるのだろうか?

 ショーパンにニーハイソックス。絶対領域。

 尚且つだ。正座しているから、小さくて丸い尻が自ずと強調されてしまう。

 思わず、俺の右手をこの看護婦さんの腰へと、回したくなるほどだ。


「先生。最近、胸が痛みます」

 いろんな意味で。

「は~い。じゃあ、お胸を出してくだちゃいねぇ☆」

 即座にTシャツを投げ捨てた。

 一体、彼の知識でどこまで治療してもらえるか、知りたいからだ。


 上半身裸になった俺をじっと見て、ミハイルは言う。

「う~ん。どこも悪くなさそうですねぇ~」

「先生! 胸が本当に悪いんです! 特に心臓辺りのトップが!」

 これを狙っていたのだが……。

「残念ですねぇ☆ うちは皮膚科です☆」

「……」

 

 クソがっ!


  ※


 お医者さんごっこは悔しいことに何事もなく、無事に終わってしまった。

 しかし、それでも彼の人格は元に戻らず。


「タッくん☆ 次はなにをしよっか?」

 とベッドの上で座りこみ、ニコニコ笑っている。

「ううむ……」


 きっと、高熱で人格がアンナに変わってしまい、元に戻れないのだろう。

 ならば熱を冷ませば良い。

 姉のヴィッキーちゃんに頼んで、解熱剤でも使うか?


 そんなことを一人で考えていると、ミハイルが何を思ったのか、俺を力づくでベッドに倒す。

 彼も一緒に並んで寝るのか、と思ったが。

 予想と反して、ミハイルは何故か俺の腹の上にピョンと乗っかる。

 軽い体重だから、大した衝撃ではないが。

 

「ふふふ」

「お、おい? なにをする気だ?」

「ずーっと前に……ひなたちゃんとラブホテルに行ったよね?」

 笑ってはいるが、目つきが怖い。

「はい……行きました」

「あの時、アンナのスマホに“変な写真”を送ってきたこと覚えてる?」


 オーマイガッ!

 事故とはいえ、現役女子高生のひなたを助けた時。

 アンナから連絡が来て、それに激怒したひなたが、『騎乗位スタイル』のツーショットを送信した事件のことだ。

 まだ根に持っていたのか……。



「あ、あれは事故です。それにラブホは後で一緒に楽しんだじゃないですか」

「ダ~メ☆ タッくんの記憶から消してしまわないと、汚れちゃうでしょ☆」

「えぇ……」


 またお馬さんで遊ぶんですか?

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