第四十章 たまには休んでもええんやで

第343話 遺産問題で家族は分裂します


 ひなたパパから、貰ったお土産。

 現金にして、300万円。

 嬉しいというより、怖くて仕方ない。


 帰宅しても、机の中に隠したまま放置しておいた。

 母さんに見せれば、「BL本に使えるわ!」と歓喜するだろう。

 妹のかなでに見せても、同人エロゲとかに散財するに違いない。

 無職のヒモに近い親父なんかは、もってのほかだ。


 相談する相手がいない。


 次の日にひなたへ電話をかけてみたが。

『お土産ですか? パパに聞いたら、絶対に貰って欲しい。ですって♪』

「そ、それは困るんだ。高額なもので……」

『つまらないものだから、新宮センパイのご家族で楽しんで欲しいみたいですよ』

「えぇ……」

 と断固として、拒否されてしまう。


 悩んだ末、俺は担当編集の白金に電話してみることに。


 300万円という金額を聞いて、白金はこう答えた。

『え、本当ですか? じゃあ、そのまま貰っておきましょうよ♪』

「いや。ダメだろ。贈与税とか関係しないのか……それに、この金を貰ってしまったら。俺がひなたの家に婿入り決定しないか?」

『ないですよ~ 金持ちの冗談みたいなもんでしょ。まあ、贈与税は確かに面倒ですね……じゃあ、こうしましょ』

「なんだ?」

『その300万円をDOセンセイから、弊社が預かります。そして、今後の取材経費に当てたらいいですよ~ それなら、ひなたさんでしたっけ? 彼女の取材にも使えるし♪』

「大丈夫なのか……」

『今度、打ち合わせする時に新聞紙でも巻いて持って来てくださいよ。私のデスクに隠しておきますから♪』

 こいつ、自分で使うんじゃないだろうな。

「わかった。今度、持って行く」

 そう言って、電話を切ろうとしたら、白金に止められた。


『あ、DOセンセイ! もう少しお時間いいですか?』

「なんだ?」

『発売した“気にヤン”の一巻なんですけど。めっちゃ売れていて。売り切れ続出。増版に次ぐ増版なんですって!』

「そうなの……」

 なんか、あんまり嬉しくない。

 だって書きたいものを書いて、売れたわけじゃないから。

 俺の実力でもないし。


『DOセンセイって、いつも“気にヤン”の話になると喜んでくれませんね……。ま、いいですけど。そこでファンから要望もありまして。編集長から早く続きを書いてくれと頼まれたんです』

「ちょっと待て。一巻が発売したの、先月だろ? 早すぎじゃないか」

『ええ、博多社始まって以来、異例の早さってレベルです! なので、二巻と三巻を一週間以内に書き上げてください!』

 ファッ!?

 なんで、そんな超短期なんだよ!


「一週間って……何万字ぐらいだ?」

『20万字です』

 サラッと言うな!

 肩が壊れそうだわ……タイピングで。



「で、出来るだけやってみよう……」

 仕事だからね。

『あとですね。二巻はサブヒロインのひなたちゃんを主にして欲しいんです。それから、次は腐女子のほのかちゃんパートって感じで……』

「ちょっと待て。二巻目で、二人のサブヒロインを交互に出し、尚且つメインのアンナも出す感じか?」

『いえ、違います。二巻はひなたVSアンナって感じで。三巻が腐女子のほのかちゃんが成り上がる感じですね』

「……」


 三巻のくだり、いる?

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