第339話 現役JKとお泊り


「恥ずかしいから、あんまり部屋の中をジロジロ見ないでくださいね」

 とひなたは頬を赤くして、扉の前で恥じらう。

「大丈夫だ」

「私の部屋、あんまり女の子らしくないから……センパイにがっかりされたくないな」

 なんて唇を尖がらせる。


 しかし、両親が同じ部屋で泊れと、命令してきたのだ。

 ここで泊るしか、あるまい。

 パパさん曰く、「間違いがあっても構わん。むしろ起こしてくれ」だが。

 俺としては、板挟みで息が詰まりそうだった。

 目の前のひなたに、どこかを徘徊しているアンナ。



 ギギっと扉がゆっくり開かれた。


 何故か、部屋の中は真っ暗だ。

 俺がひなたに灯りをつけるように頼む。

 すると、そこには衝撃の光景が……。



 バッサバッサと音を立てるのは、止まり木から俺を睨む大きなフクロウ。

 それも三匹。

 柔らかいクッションフロアをくねくねとうごめく、無数のヘビ達。

 そして、ガラガラとうるさいのは、ゲージの中で回し車をまわすハムスター。

 他にもインコ。フェレット。チンチラにトカゲ。ハリネズミ……。


 ちょっとした動物園よりも、ペットの数が多すぎる。


「……」

 俺は言葉を失っていた。

 これのどこが女の子らしくない、部屋なんだ。

 もう、男女関係ないだろ……。

 当の本人は、足をくねくねさせて、恥じらっているが。


「ね、女の子らしくないでしょ? この部屋に入ったの、センパイが初めてなんです」

「そうか……嬉しいよ」

 こんな動物園。確かに男女関係なく、入れたくないだろう。

 ていうか、入りたくない。


 だって、今も俺の足元を無数のヘビさん達がまとわりつくんだもん。


「センパイ……ホントに今晩、私の部屋に泊るんですか?」

 瞳をキラキラと輝かせるひなた。

 きっと。一晩、同じ部屋で寝ることに緊張しているのだろう。

「ああ。泊るよ……」

 今にもヘビに噛まれそうで、怖いから。


  ※


 同じ部屋で泊ると言っても、ひなたは大きなプリンセスベッドでご就寝。

 大好きなペット達と、一緒に夢の中。

 可愛らしいフェレットが、布団に入り込むほど、飼い主が大好きなようだ。


 俺はと言えば。床に布団を敷いてもらい、ひなたの隣りで寝ることに。

 ひなたは、嬉しそうに「今日はいい夢が見られそう」と言っていたが。

 すぅすぅと寝息をたてる彼女とは対照的に、俺はギンギンと目を光らせていた。

 暗い部屋の中、一人で天井を見上げる。


 若い女の子とひとつ屋根の下で、おねんねするからじゃない。

 夜這いとか、そんな余裕は一切ない。

 俺の布団の中に何人ものお客さんが、入り込んでいる。

 先ほどのヘビさん達だ。

 どうやら、珍しい男の客である俺を気に入ったらしく。

 ずっと、俺の身体にまとわりついている。

 何匹もだ。


 時折、枕元に顔を出してきて、舌をチロチロと出す。

 そして、ペロペロと首筋をなめてきた。


「あっ……」


 冷たくて、ちょっと気持ち良いかも。


 このあと。ヘビさんたちと、一晩中仲良しさせていただきました。

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