第4話:王太子

 ガラガラガラ


「ロレンス王太子殿下、御入室!」


 侍従候補の一人が教室のドアを開け、別の一人が声をかけます。

 戦闘侍従、と言ってはおかしいかな、近衛騎士とか親衛隊員と呼ぶべきか、まあ、呼び名はどうでもいい者が、安全を確認するために先に入ってきます。

 王太子のロレンスが入ってくるのはそれからです。

 ゲームではここまで詳細に設定されていなかったですが、一国の王太子の安全を確保するには、これくらいの事は当然必要です。


「やあ、レイラ、随分と派手に動いたそうだね」


 教室にいた令嬢達が、私を怒らさないように、でも何とか王太子ロレンスの視界に入りたいと、謎の行動をとっています。

 婚約者がいる者は別にして、多くの令嬢が、側室の座を手に入れて貴族のままでいられるか、平民に落ちるかの瀬戸際なのです。

 側室の中で最高の座が王太子の愛妾に選ばれる事です。


「王家の藩屛たるダンセル公爵家の令嬢として、必要な事だと思ったのですが、王家の思惑と違う事をやってしまったのでしょうか?」


「いや、そんな事はないよ、とてもよくやってくれた。

 その点は心から感謝しているのだが、その為にレイラが恨まれないかと心配でね」


 やれ、やれ、設定通りなのか、それともこちらの方が先で、博愛主義者の王太子を参考にゲームを作ったのか?

 どちらにしても、私の好きな渋い漢の魅力はないですね。

 まあ、でも、心配してくださっている事の御礼は言わなければいけませんね。


「心配していただき、ありがとうございます。

 ですがこれもダンセル公爵家令嬢の責務、御心配には及びません」


「そうか、頼りにしているよ、レイラ」


 王太子はそう言うと、チラリとミアの方に視線を向けました。

 私に紹介しろという合図です、とてもありがたい事ですね。

 ゲームの設定とは全然違いますが、これでミアと王太子が出会いことになります。

 王太子がミアに恋をして、私との婚約を解消してくれたら、私は自由になれます。

 問題は私を側室に落とすとか、ミアを側室に迎えると言った場合です。

 ゲーム上の性格では、側室廃止派だった王太子ですが、政治上の配慮をして、考え方を変えないとは言い切れないのです。


「こちらにいるのが、先の話に出ました、光の聖女ミア嬢ですわ。

 それと、殿下もお聞きだとは思いますが、馬鹿が余計な手出しをしないように、私の養妹に迎えましたので、、パリル伯爵家令嬢ミアとなります」


「ちょっと待ってくれ、そんな話は聞いていない。

 オスカー、どうなっているんだ?」

 

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