第5話:奸臣
「は、申し訳ありません、ロレンス王太子殿下。
この話は聞いていたのですが、確認が取れない真偽不明の情報を御耳に入れるべきではないと、真偽を確かめておりました」
やれ、やれ、困ったものです。
王太子の周りでは、情報の大切さが分からない者が力を持ってしまっています。
いえ、愚者ならまだましですが、恣意的に王太子に知らせるべき情報を握り潰しているのなら、君側の奸、佞臣という事になります。
まだ学生のうちから、このようなモノを側に置いているようでは、英邁な王太子というのも、おべっかから広まった過剰評価かもしれませんね。
「そうか、ならば仕方がないな」
ふう、やはり過剰評価なのか、それとも佞臣を見極めるために泳がしているのか?
私なら、王太子と二人っきりになって、直接真意を聞き質せる立場ではあります。
ですが、それでは、私の悪い噂が社交界に流れてしまいます。
王太子と結婚したいのなら、むしろ好都合な噂ですが、私は王太子と結婚する心算が微塵もありませんから、醜聞はさけたいですね。
たとえその為に恨まれ、敵を作ることになろうとも!」
「ロレンス王太子殿下、それは奸臣を見抜くためのお言葉ですか?
まさか本気でそのような事を口にされたのではありませんよね?
情報は宝、剣にもなれば盾にもなる、とても大切な力です。
それを一人の家臣に任せるなんて、愚かとしか言えません。
表向き情報を伝える者と、その者が恣意的に情報を扱い、殿下や王国を自分の意のままに操ろうとしていないか、確認するための裏情報を伝える者を置くべきです」
「レイラ嬢!
それは私が佞臣だと言われているのか!?
それは私の名誉を傷つける妄言、いや、讒訴ですぞ!」
私の言葉を聞いて、プランケ城伯家の長男オスカーが、顔を真っ赤にして、唾を飛ばしながら文句を言ってきました。
こいつ、というか、プランケ城伯家にはもともと悪い噂がありました。
いえとりけします、貴族としては当たり前の保身というか、出世のための策です。
王太子と同学年だと、学園に在学している間は同級生として親しく接してもらえる可能性があり、出世の糸口になるのです。
だから、前後三年くらいの子供は、出生届を誤魔化すのです。
「わざと情報を操作したのではないのなら、昨日のうちに情報を得ながら、今日まで確認をとらなかったという事になります。
光の聖女の情報が王家の重大事であることは、馬鹿でない限り分かります。
それを今日まで確認もせず、殿下が下問されるまで報告しない。
佞臣でなければ馬鹿か怠惰という事です。
殿下の側近に馬鹿も怠惰も不要です!
年齢を偽って殿下に近づいた事、何かやましい事があるに違いありません。
護衛役、この者を捕らえて厳しく調べなさい!」
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