第15話
希夢と美琴は息を殺した。
が…次の瞬間、隠れたおもちゃ箱の中のオルゴールが鳴ってしまった…おもちゃのマーチ…
「へへぇ…そこに居るのかぁ〜?」
もう駄目か…希夢は美琴の頭を抑え自分だけが立ち上がった。
そして両手を肩まで挙げ衣装ケースと玩具箱の影から出て言った。
「一つだけ教えて欲しい、父を殺したのはあなたですか?!」
「ははぁ…あの時の奴の子か?」
「何を言ってるんだぁ〜?ひでぇ昔の事…お前知らなかったのか?」
拳銃を希夢に向けたまま前川は続けた。
「ありゃ事故だ…あいつ窓も開けずにメッキ水槽で薬品を撹拌してやがったんだ」
「有毒ガスが発生してるのにも気付かずにな〜」
「しかし…こうなった以上、お前らは生かしてはおけないな〜、よう、そこに隠れてるお姉ちゃんよ」
美琴も立ち上がり、希夢に寄り添った。
「あの日は、通報を受けて駆けつけた時、作業台に綺麗で高そうな宝石が裸で置いてあるもんでよ…ちょいと頂いておいただけなんだよ…ちっ」
前川は両手で拳銃を構え二人に狙いを付けた。
その時、後ろから凄い勢いで前川を羽交い締めにする人影が…金森だ…生きていたのだ。「お前…どうして…確かに胸に命中したはずだったのに!くそっ!」
ダーン!天井に銃が暴発する。
金森は前川の腕を掴んだまま身体をひるがえすと背負投げを打った。その衝撃で拳銃は前川の手を離れ部屋の隅に転がっていった。
金森は手を弛めず、そのまま更に柔道の寝技で前川を動けなくした。
「ぐ…ぐふぅ…離せ…」
外で何台ものパトカーのサイレンが聞こえてくる。
程なく特殊部隊が部屋になだれ込み、床にいる金森と前川に一斉に銃を向けた。
殿(しんがり)に入って来た私服警官が部隊長に目配せした。
「待機!」
部隊長の声で特殊部隊が狙いを付けたまま下がった。
私服警官が床に転がった拳銃を拾い上げ。
「二人共起きろ」と言った。
金森の寝技から解放された前川が、よろめきながら起き上がると私服警官の元へ行き、「こいつら、住居不法侵入だ!抵抗したから、発泡したんだ」と、告げた。
警察組織の隠ぺいか…?希夢は歯を食いしばった…が、その時
「えらく騒がしいですな…ここは、希夢お坊ちゃんの家ですよ。お静かに願いますよ…」
後から入って来たのは執事の大久保だった。
私服警官が大久保に
「失礼しています。通報、感謝します」と会釈し、希夢の方に向き直ると…
「我々は兼ねてからの告発で長年内定をを行ってきました。そこに居る前川は刑事の 職務を利用し、事件の度にその現場で窃盗を働いていた事が判明しています。同じ警察官の一員として謝罪します」
「前川!窃盗、及び殺人未遂の容疑で逮捕する!午前10:24…弁護人は必要か?」
私服警官は前川に手錠を掛けた。
「ちっ…」
隊員二人に両脇から拘束された前川は、ぐったりうなだれた。
希夢は安堵の表情になり、希夢の袖下を引張っていた美琴は、その腕にしがみついた。「すっごく怖かった…」
特殊部隊と警官達が撤収した後、そこには長年の仕事を終えたように金森が立ち尽くしてた。両腕をぶらりと下げ、天を仰いで目を閉じた。
大久保がそんな金森に歩み寄り、両手を握ると
「坊っちゃんの為に本当にありがとう…長年の間ご苦労様でした」と、労いの言葉をかけた。
「そうだ!今夜私め、腕を振るって料理を作ります故、皆様と、琴絵様もお誘いの上こちらにお越しくださいませんでしょうか?お待ち申し上げております」と、にっこり笑った。
「お〜久しく忙しくなりそうです〜!」
そう言うと大久保はそそくさと消えた。
「二人共、大変な思いをさせてしまったな…家まで車で送って行くよ」
と金森が言った。希夢も美琴もそれに従った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます