第4話
ドンドンドン!…ドンドンドン!
ドアを叩く音に男は目を覚ました。
どのくらい眠っていたのだろう…まだ虚ろな中、男は重い身体を起こし、すぐ目の前にある叩かれ続けられているドアを見上げた。
誰なんだ…?まったく…
男の住むボロアパートには、年に一度新聞の勧誘が来るくらいで、他に客など来ることは無い。
ドアノブにつかまるように立ち上がり、男は無言のまま鍵を回しドアを開けた。
そこには高級そうなグレーのスーツ姿に、中折れ帽を被った紳士が立っていた。そして、帽子を取ると白髪混じりの頭で軽く会釈をし、内ポケットから取り出した名刺入れから一枚を抜き差し出した。
ヤバ…すっぽかした会社の面接官がどやしに来たか…と、男は一瞬思ったが、そうでは無いらしかった。
「私、
名刺を男に渡すとこう続けた。
「先程、貴方様が道で探し物をされておられるのをお見かけしました」
「実は先日あの場所で、“希望石”を入手された方がおられるとの情報が入りまして…もしや何かご存知ではないかと、伺いに参った次第なのです」
希望石…?あれはそういう名前なのか…
俺が捨てた後に誰かが拾ったってのか?!畜生!…男が内心ガックリとしていると
「ご存知なら、希望石の事をお聞かせください!どんな事でも構わないのです!」
紳士はそう言うと、手さげ鞄からレンガのような物を1つ掴み出すと、造り付けのシューズボックスの上にドカッと置いた。
「お礼はいくらでもしますので…」
…札束!?…なのか!?
見慣れない立方体に帯が掛かっている。
その光景に圧倒されつつ、男は先日その“希望石”を拾った数分間の出来事や、石の重さ、感触に至るまで事細かに紳士に話して聞かせた。
ひとしきり話し終わると、紳士は納得した様子で、「よく分かりました。とても参考になりました」と、丁寧に頭を下げ、玄関の外まで下がりカチャリとドアを閉めた。
シューズボックスの上には、異様な存在感の札束が一つポツリと残されていた。
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