第3話

 数日前に、あの石を手にした場所…そして投げ捨てた場所。男が辿り着いた朝の景色は、あの夜のとは全然違って、眩しい光と動き始めた街の音に溢れていた。


 男は両手を膝に、暫く背中を上下させて息を荒げていたが、やがてゆっくり上体を起こすと辺りを見渡した。


 それらしき物は無い…。そして、うろうろ探し始める。

 

 道端の草むらも、側溝に溜まった水の中の泥も…掻き分け、いつしか夢中になり探していた。


 泥だらけになり、四つん這いなり…

 それらしき塊を掴んで、見ては捨て、また掴み…。時折、動きを止め考え込み…。泥だらけの手で頭を抱え振り乱し…こちらを探していたと思えばあちらを探し、その向こうを探していたと思えば、また最初の場所から探し…考え込み…。それを一日中繰り返した。


 しかし、辺りが暗くなり始めても、あの石は見つからなかった。


 男は大の字で仰向けになると呟いた。

 「駄目だ…」


 男が、石を探すのを諦め、家に帰り着いたのは、夜の帳もすっかり降りた頃だった。


 約束の面接もすっぽかしてしまった。いや、それ以上にあの石が見つけられなかった事が悔やまれて仕方なかった。


 男は疲れ果て泥んこのまま玄関にうずくまると、いつしか眠り込んでいた。

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