第20話オオトリ

「あ〜寒いなぁ〜」


夏を超え時期は12月になった。

今日は学校が半日で終わり帰宅している。

相変わらず美影も一緒だ。


「今日は特に寒いね。明日からは少し暖かくなるみたいだけど」


「そーなの?!」


「でもそれ過ぎたら極寒らしいよ。雪が降るかもって」


「我々人類に試練前の休息を与えてくれるって事ね…」


「はあ?何言ってんの??」



そんな他愛のない会話をしながら道を歩く。

せっかく半日で終わったんだし、このまま帰るの勿体ないよな?

美影と別れて寄り道でもしようかな。


「ねえ?ルーくん?」


「あ、う、うん?何だよ??」

考え事をしていたので少し驚く。



「今日どっか行かない?」


「はぁ?デートのお誘いか?」


「そうだよ??」



うぐっ!!

こいつ普通にこう言う事言うか??

からかいのつもりで言ったのにこっちが、やられてしまった。



「ほ、ほ〜そうかそうか。しかしな!俺にだってデートをする相手を選ぶ権利が―――


ある…と言おうとした所を


「――ないよ。」

と、遮られる。


「言葉を被すな!」


「どうせ暇なんだから良いでしょ」


「暇だって決めつけるな!…暇だけど。たまたまな!たまたま暇なんだけど!!!」


「はいはい…」

呆れる美影。


さて、本来なら1人で行こうと思ったんだが美影も関わりある所だし美影を連れて行こうかな。


「腹減っただろ?飯食い行くか」


「そうだね!とりあえず腹ごしらえ!!……で、どこ行くの?」


おおとりだよ」


「おおとり…??」


「えっ!?鳳知らないの!?」


「知らないよ!!」



おいおい、マジか?鳳知らないのか??美向みなたさんに連れて行ってもらってないのか?

あの人も忙しいからなぁ。

なら尚更俺が連れて行ってやらなきゃな!!



「ここがラーメン屋の鳳だよ」


「鳳ってラーメン屋だったの?」



ラーメン鳳と書かれたノレンが入り口にかけてあり、ボタン式の自動ドア。

外から店内は見えないが、中はカウンター席とテーブル席が5つある。



「あ、待って!今って11時半だよね?ここ12時からって書いてあるよ」


店の外に置いてある看板を見て美影が言った。


「あ〜、まあ、良いんだよ。ほら入るぞ」



そう言ってボタンを押して自動扉を開ける。

中に入ると豚骨の匂いが鼻を通る。

入り口すぐにカウンター席が7を反転させたような形で6つあり

カウンター席の後ろにテーブル席が2つ、店の奥に3つある。


「お客さんごめんよ!まだ開店してないんだ」


店に入るや否や女性の声が響く。

厨房の奥の方に居るのかこちらに気付いてないみたいだ。


「ソシエさん俺だよ」


「ん??」

厨房に居た店主がこちらを見る。

「なんだ麟太郎か」


「そそ!俺俺」


「いつもの席に座りな」


「あ、今日は俺だけじゃないんだけど良い?」


「あん??」

そう言ってソシエさんは俺の後ろにいる美影に気付く

「女とのデートがラーメン屋とは、アンタ女心分かってないね〜」


「はぁ?!デートじゃねえし!」


「に、してもかなりのべっぴんさんやなぁ!麟太郎やるやないか!おばさん感心したよ」


「いや、彼女じゃねーし!」


「またまた〜。夏子には黙っといてやるから照れるな照れるな」


「だからー!こいつの名前は追春美影おいしゅんみかげ!!って言えば分かるか?」


「へー美影ちゃんね〜……ん?追春??………はっ!!?」


先程まで手を動かしながら流暢に喋ってたソシエさんが、美影の名前を聞いた瞬間手を止めた。

そして厨房から出てきて美影の前に立つ。


「アンタもしかして美向の娘かいな?!」


「あ、はい…」

少し戸惑いながら返事をする美影。


「いやー!よう見たら10代の頃の美向ソックリやんか〜。いや、美向よりべっぴんや!!」


「えっと…?」


そろそろ説明が必要みたいだな。

この金髪ショートの美女はソシエさんと言って元アフタヌーンガールズのメンバーだ。

言わば俺の母さんや美向さんの同期と言った人。


アメリカ人とのハーフらしくてかなり整った顔をしている。金髪は地毛らしい。

アフタヌーンガールズ1期生の中ではダントツに可愛いかったらしい。

そんなソシエさんはアイドルになる前…中学生の頃はヤンチャしてたらしい。…元ヤンだ。

その名残り?とは違うが、口調とか男っぽい。



「え?じゃあお母さんと同い年?」


「せやせや!40やで!嫌やな〜年取るんわ」


「み、見えない。20代と思ってました」


「ほ〜嬉しい事言ってくれるな〜」


「でもこの人元ヤンだから気をつけてな」

と茶々を入れる


「やかましいわ!…てか、麟太郎!来るなら来るってラインせえっていつも言ってるやろ?」


おっと、怒らせるとマジで怖いからここは大人しく謝る。


「ごめんごめん。急にここのラーメン食べたくなってさ!すぐにでも食べたいぐらい美味しいからラインするのも忘れてた」


「まあ、そー言う事ならええけど」


ソシエさんは褒められる事に弱い人だ。

だから多少のよいしょをすれば大体の事は許してくれる。


「それよりすまんの〜ずっと立たせたまんまや!座って座って」


そう言われ俺と美影はカウンター席に座りソシエさんは厨房に立つ。


「美影ちゃんもラーメンは好きなんか??」


「え?…まあ、好きな方ですけど余り食べませんね」


「えっ?なんでなん?」


「お母さんが体型を維持する為にラーメンとかは食べないんですよ」


「あ〜そかそか!美向は女優やもんなぁ。しかし美向も凄いなぁ〜大好きなラーメン我慢してるんやなぁ」


「お母さんってラーメン好きなんですか??」


「美向はなぁ、ラーメン好きやでぇ。年に何回かウチに来てくれるしなぁ」


「知らなかった…」


「夏子もや!夏子もラーメン好きやで!」


「特に母さんはここのラーメンが好きって言ってたよ」


「せやろ?…ところで麟太郎。この前夏子が妙な事言ってたんやけどなぁ?」


「ん?母さんが?」


「正直なぁアンタもそうだと思うけど夏子がアイドル卒業した理由ってウチらも知らなくてなぁ、この前それとなく聞いてみたんよ」


「へ〜母さん理由言ったの?」


「いや、それがな?未来の歌姫の為よ!とか言いよってな?」


「はぁ?なんじゃそりゃ」


「てっきりりつの事かと思ってたけど、麟太郎のそのリアクション見る限り違うみたいやな」


「一応律はスカウトされたけど興味ないって断ってた」


「と!まあ、ええか!それより腹減ってんやろ?作るからこん中から選び!」


そう言って切られて使用済みの食券を適当に渡してくる。


「食券買うよ?」


「ええよ、今日は美影ちゃんに会えたからイーブンや!」


「に、しても多いなぁ!好きなだけ選んで良いの?」


「ええで!これがほんとの食券乱用や!」




あぁ…職権濫用ね…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダジャレを言うのは誰じゃ @NIAzRON

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る