第17話スターレイン(4)
「豚をブッタ!」
「この亀噛めへん!」
「ラクダは
「サイを怒らせた…ごめんなサイ!」
「カナリヤはかなり嫌ー!」
「キャビアを注文するキャビア(キャリア)・ウーマン」
「コンドルが食い込んどる!」
「えーと、えーと…」
「はい!はなちゃんの負けー!」
「くぅー!!」
なんで夏子お婆ちゃんとダジャレを言い合ってたのかと言うと
夏子お婆ちゃんがダジャレが好きだと説明し
「私と勝負しない?」
と言い出したのだ。
その勝負内容は、お互い思い付くダジャレを言い合って出てこなくなったら負けと言うものだ。
ウチの家系はダジャレが好きで特に祖父の麟太郎お爺ちゃんが良く言うのだ。
だからこの勝負自信があったのだけど……流石ひいお婆ちゃんね…祖父より強いわ。
「私が勝ったからはなちゃん罰ゲームね!」
「えっ?罰ゲーム??聞いてないよ!?」
「ふふふ…簡単な罰ゲームだから安心して?」
「そ、それなら良いケド…」
「私の質問に答えるだけよ」
「質問??」
「じゃあ良い?」
私はどんな質問がくるのか予想も出来ず{バクバク}心臓を動かしていた。
「あなたは―――
夏子お婆ちゃんが、ゆっくりと口を開き質問を投げかける
―――何者なの?」
{どくん}と心臓が跳ねるのが分かった。
どう言う事?私が未来から来たってバレたの?それともHANAが本名じゃないとバレた?それか他の事??
「最初見た時から違和感はあったのよ」
色んな事を思案してる私に夏子お婆ちゃんは更に言葉を続ける。
「だって同じ顔よ?双子と思ったぐらい私達顔が似てるのよ?そして決定的なのが、あなたの腕に巻いてるソレ」
え?私の腕…??
腕には祖父に貰ったミサンガが巻かれてるだけよ?
あれ?このミサンガって確か……
「何で私と同じミサンガしてるの??」
夏子お婆ちゃんは左手首に巻いてるミサンガを私に見せながら言った。
そうだ、このミサンガは元々夏子お婆ちゃんのじゃない!
完全にやってしまった!本来は20年前の夏子お婆ちゃんに会う予定だったから油断した!
流石にコレを19歳の夏子お婆ちゃんに見られたのはヤバい!!
私が未来の曾孫って知られたら麟太郎お爺ちゃんからの家系が無くなってしまうかもしれない!!
そーなったら私の存在も無くなる!!
どーしよ…どーしたら!??
軽くパニックになった私を見て夏子お婆ちゃんは優しく{ニコ}っと顔を崩した。
「このミサンガね?私の曾祖母の形見なのよ」
曾祖母?夏子お婆ちゃんは、私のひいお婆ちゃんだからその曾祖母は……ひいひいひいひいお婆ちゃん?!?
「私の曾祖母はね?
ん?華支凪??どっかで聞いた事あるような…??
「ねえ?ゆうやけこさめって曲知らない?」
ゆうやけこさめは有名な童謡だ。私も小学生の頃歌った記憶がある。
「それ作ったのが私の曾祖母!華支凪夕子なのよ!!」
えっ!!!?
そ、そうだ!思い出した!他にも大きなカキの木の下でとかイルカの学校等沢山の童謡を作った人が華支凪夕子だった筈!!
ちょ、ちょっと待ってよ!曾祖母は伝説のアイドルで、更にその曾祖母は伝説の童謡作曲家!!?どーなってんのよウチの家系は!?!
「びっくりするよね?」
びっくりどころじゃない!混乱してるわよ!
いや、混乱じゃないわね。正に動揺よ!動揺してるわよ!!
「夕子お婆ちゃんはね?戦争の真っ只中に親と別れた子供達を束ねてヴァイオリンを弾いて励ましたりしてたみたいなの。その演奏が童謡として残ってるのよ」
「私も祖母からその話を聞いた時はびっくりしてね。それで私がアイドルやるって聞いた祖母がくれたのが、このミサンガよ」
「だから…絶対に見間違う筈がないのよ」
そう言って夏子お婆ちゃんは私の右手首に巻かれてるミサンガを凝視する。
……流石に誤魔化すのは無理かもしれない。
でもコレの説明をすると言う事は、私の事も説明しないといけない…
過去が変わるかも知れない…そうなったら私の存在は………
「答えられないの??」
夏子お婆ちゃんの問い掛けに私は{コクン}と頷くしか出来なかった。
「そっか……じゃあ質問変えるね?あなたの本当の名前は何?」
え?名前??名前も嘘だってバレてるの?どんだけ勘が良いのよ…
「はなって多分偽名だよね?ミーナってメンバーが居てね?本名は
「ミーナの時はアイドルとしての目をするの。あなたをはなちゃんって呼ぶ時にその美向と同じ様な目をするから多分似た様な事じゃないかなって…」
これが夏子お婆ちゃんか…洞察眼が凄い。
名前ぐらいなら良いよね??
私は観念して言う事にした。
「私も歌手活動していて、その時の名義がHANAなんです。私の本名は、
「凛華ちゃんって言うんだ!可愛い名前ね」
「あのっ!」
「ん?どーしたの??」
「私の事は、これ以上聞かないでください…言えない理由があるんです…」
私は真剣にお願いした。
流石にこれ以上詮索されたらヤバい。
特にお爺ちゃん……
だから…だからこれ以上はッッ!!!
私は下を向いて瞼を{ギュッ}と瞑った。
「ふふふ…」
瞼を瞑って何秒か何分か経ったか分からないけど、笑い声が聞こえてきた。
「クスクス」
何で笑い声が??
私は疑問に思い強く瞑っていた瞼を開き笑い声の聞こえる方へ見る
すると夏子お婆ちゃんと目があった。
「あまりにも真剣だから可笑しくなっちゃって」
「え?」
私は思わず聞き返してしまう
「凛華ちゃんの名前が聞けただけで私は満足よ。もう詮索しない!だから安心して?」
私はその言葉を聞いて{ホッ}とする。
「それより!凛華ちゃんも歌手…なんだよね?」
「え?あ、はい」
「じゃあ今度は凛華ちゃんが私の為に歌って?」
私が夏子お婆ちゃんに歌を…?
あのパフォーマンスを見た後に??
「私はあまり上手くないから…」
そう言って断ろうとした。
「いいわよ。歌って上手いとかじゃないでしょ?楽しく歌えれば良いのよ!」
楽しく…か。
そう言えば夏子お婆ちゃんは楽しそうに歌っていた。
それがあのパフォーマンスに繋がっているんだろう。
私にも……出来るかな??
私は強く決心してベンチから立ち上がる。
そして先程まで隣に座っていた夏子お婆ちゃんの方を見る
ふぅ……
息を吐き心を落ち着かせる。
曲は…あの曲だ!!
私を私にした曲!!!まだ夢を持ってた頃の曲!!!
目を瞑る…そして音楽を脳内で鳴らす。
次目を開けたら私が立ってるのは、ライトが入り混じる綺麗な舞台。
周りはファンの子達が所狭しと盛り上がっている。
さあ…私は夜を羽ばたく蝶になるのだ!!
そしてゆっくりと瞼を開き―――
「魔法を授けよう♪魔女との
―――私は歌い出す
※
「ありがとうございました」
歌い終わった私は軽く一礼をした。
パチパチパチパチ
頭を上げると夏子お婆ちゃんの拍手が響いた。
「凄く良かったわよ!」
そう賛辞をくれるが、夏子お婆ちゃんは泣いてなかった。
私は夏子お婆ちゃんの歌で涙を流した。
それはつまり夏子お婆ちゃんの歌に心を動かされたと言う事だ。
しかし夏子お婆ちゃんは、涙を流してない。
口では良かったと言ってくれるが、心が動かされなかった証拠だ。
私は悔しかった。
楽しく歌った…気持ちも込めた。
今までの自分を越えたパフォーマンスをした自信があった!なのに女の子1人の心を動かす事が出来なかったのだ!!
だから私は言った。
1人の歌手として――
――同じ歌手として
――越える壁だと認識して――
「もう一度夏子さんの歌を聞かせてください」
「…良いわよ」
そして夏子お婆ちゃんのパフォーマンスが始まった
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