第14話スターレイン(1)

「でわ次はHANAで、Travelerです!」



そう紹介され豪華なステージに女性が登場する。

そのステージにはスタンドマイクが設置されていてその女性は歌手だと分かる。

曲のイントロが流れ出すと同時に色んな光が中央の彼女を照らす。


「ありふれた日常を壊す旅に出よう。昨日までの玩具じぶんをぶっ壊して」


そして彼女が歌い出したと同時に彼女の衣装が出現する。

この時代…2080年にはミラージュライトと呼ばれる物がある。

そのミラージュライトとは光を利用してそこに色んなものを出現させると言う物で、彼女はそのシステムを利用し自分の着てる服を次々に着替えてるのだ。


映像と言うのは進化していてこの時代では空に映像が映し出されている。

更には個人個人で空想ネットの家があり、そこでこの映像を見てる人も居る。

そこで歩いてる人も目で見る分では、普通に歩いてるが、ネットの世界だとHANAの曲を聴いてる。



「僕らは誰でも旅人さ。様々な困難に立ち向かう勇者なのさ。周りはエネミーだらけのストーリー」


曲がサビに入るとそこら中で一緒に盛り上がる人達がいた。

そう、彼女はこの時代の歌姫で日本だけじゃなく世界をも魅力しているのだ。


この物語は、そんな歌姫HANA…本名、花岸凛華はなぎしりんかが一つの壁を乗り越えて成長する話なのだ―――





「お疲れ様でした〜」

「いやーネットは大盛り上がりでしたよ!流石HANAさん!」


そんな賛辞を浴びながら私は自分の楽屋へと戻る。

楽屋は至って普通の部屋だ。

そこそこの広さはあるが、私ぐらいなら普通だろう。


コンコン


やっと座ったと思ったと同時に部屋がノックされる。

「どうぞ」


「HANAさんお疲れの所すいません」

部屋に来たのはスーツ姿の女性で、私のマネージャーの筒井つついさんだ。


「どうしました?」


「来月の件ですが、やっぱり駄目ですか?」


「あぁ…その話?私のひいおばが伝説のアイドルで、その特集のゲストに、、ってやつでしょ?」


「はい、やはりHANAさんが来ないと番組自体も成り立たないと言いますか…」


「知らないわよそんなの。そもそも私ひいおばって会った事もないのよ!?何を話すのよ?!」


「そ、それは…」


「ね?そりゃお爺ちゃんとかの事なら一杯遊んでもらったし話せるけど、ひいおばは私が産まれてすぐ亡くなったのよ??話す事なんか無いわよ」


「そ、それでも"今"だからこそ番組をやりたいんだと向こうのPが熱く語ってましてね…」


「うん、だから私抜きでやれば良いじゃない」


「し、しかし身内の番組を蹴ったとなればHANAさんのイメージが悪くなったりしますよ?」


「はぁ…イメージなんか今の時代どーなっても良いわよ。私は歌手!歌を歌うだけよ」


「分かり…ました。なんとか上に報告してみます…」


「筒井さん。いつも悪いとは思ってるわ。だから代わりたいならいつでも代わって良いんだからね」


「何を仰るのやら。私は貴女のマネージャーである事に誇りを持ってます。こんな事ぐらいで代わりたいと思いませんよ」


「そう、、貴女がそれで良いなら良いケド……。ところで今日のこの後の予定は?」


「今日はもうお終いです。明日も休みですが、明後日の大晦日はカウントダウンコンサートに参加するので体調管理はしていてくださいね」


「もう今年も終わりか…なんか毎年1年が早く感じるわ」


「それほど人気があるって事ですよ。では、また大晦日の時に連絡入れますね」



そう言ってマネージャーの筒井さんは部屋を出て行った。

はぁ…この後どうしよう。

明後日のコンサートに出るなら遠くには行けないわね…実家に帰ろうかな。


こうして私も楽屋を出るのだった。




ピンポーン


「はい、花岸ですけど」


「お母さん?私、開けて」


「えっ!!?凛華!?」


慌てながらも母はドアを開けてくれる。

私の実家は高層マンションの1室で、私が親孝行で与えた物だ。

この家には母と父と祖父と妹が住んでいる。


ガチャ

「ただいま」


「もー!帰るなら帰るって一言言いなさいよ」

「しょうがないでしょ、突然休み貰ったんだから」

「いつまでいれるの?」

「明後日までかな」

「えっ!?休み1日しかないの?」

「カウントダウンコンサートに年初めのコンサートに正月のライブに…それらが終わったら休みはあるわよ」

「大変ねぇ…」


そんな話をしながら私はリビングに行く。

リビングに着くとソファに座ってテレビを見てる人が居た。


「うひょひょー流石俺の孫じゃ。綺麗に映っとるのぉ〜」


「ちょっとお爺ちゃん!!変な目で見ないで!」


「おっ?凛華じゃないか〜」

と、ソファから飛び上がり孫娘に抱きつく祖父。


「お〜お〜良い女になったの〜」


「ちょっとお爺ちゃん!気持ち悪い!!!」


「な、なんじゃと…気持ち悪いじゃと?…そ、そんな…凛華も変わったのぉ…小さい頃はお爺ちゃん大好きっていつも抱きついて来てくれてたのに……お爺ちゃんは悲しいぞ…」


誰が見ても分かるほど落ち込む祖父。

それを見かねた母が割って入る


「お父さん!凛華ももう20歳よ?そりゃ嫌がるわよ」


「孫も可愛がる事が許されんようになったのか…」

トボトボとソファに座る祖父。


「まあまあ、凛華は大人になったけどまだ美花みはなが居るでしょ?」


「ねぇ?美花って何歳になったの?」


「そーねぇ…15でデビューして16で一人暮らししてそれから会ってなかったのよね?」


「うん、この4年忙しくて全然帰れなくてさ…やっと貰った休みも1日…」


「大変ねぇ…美花はもう16よ。来年高2だけどね」


「そっか…もうそんななるんだ。私が行けなかった高校に行ってるんだ」


「嫉妬?」


「違うよ。嬉しいんだ。私の代わりに高校生活楽しんでほしいなって…」


「そう…大人になったわね」


「ところでお爺ちゃん!」


「んにゃっ!?」

いきなり呼ばれて変な声を出す祖父。


私は祖父が座ってるソファに腰掛け話をする


「ひいお婆ちゃんってどんな人なの?」


「はっ?ひいお婆ちゃん??…母さんの事か?」


「そーそー!お爺ちゃんからしたらお母さんだね!」


「なんじゃいきなり…」


「なんか来月ひいお婆ちゃんの特番をしたいとかでゲストに呼ばれたのよ」


「はぁ?母さんの?今更??」


「なんか"今"だから良いんだって」


「母さんの事は今でもテレビで出るだろ?昔の凄いアイドルとかで」


鷹宮夏子たかみやなつこでしょ?名前ぐらいは知ってるけど、そんぐらいよ私は」


「俺もそんぐらいだよ。母さんの事は詳しくない」


「えっ!?そーなの??何で?」


「聞いちゃいけないのかなって思ってそのまま今になるかな。でもこれだけは言える」


「え?何?」


「母さんがアイドルを卒業しなかったら俺は勿論、凛華だって産まれてなかったって…」


「それと凛華は母さんソックリだって事かな」


「あぁ〜…そうねぇ…そのせいで私が鷹宮夏子のひいまごだってバレたぐらいだしね」


「化粧で誤魔化してるが、お前はもっと幼い顔立ちだからな。たまに母さんを思い出すよ」


「幼いって言わないでよ。結構コンプレックスなんだから」


「まあ!童顔って良い事なのに贅沢ね〜」

母が割って入ってくる。


「そう?どーがんかえて(考えて)も良い事ないわよ」





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