第8話優しさがボクを悪者にした(中編)

「……と言う訳なんじゃよ」



僕と博士は壊さんに事の顛末を説明した。



「なるほどの〜。今から5年後に地球がの〜」


「かいちゃんなら信じてくれるじゃろ?」


「信じるも何も、くらちゃんの言う事を疑う訳はないじゃろ。して、儂は何をすれば良い?」


「流石かいちゃんじゃ!かいちゃんにはのぅ…」



こうして僕と博士は壊さんにこの世界の未来を託す事に成功した。


「すまんかったのぉ…いきなり来てしまって」


「いやいや、良いんじゃよ。何よりこの世界の為じゃしの」



こうして部屋を出ようとした時



「ぐぎゃああああぐりゅうううああああああああああ」



聞いた事のない声が響いてきた。


「ぐごげゃあああああああああ」


それはまるで悲鳴のように聞こえた。



「なんじゃこの声は」


「気にしないでくれ」


と壊さんは言うけど



「ぎぃやああああああああごげえええええ」


と、悲鳴のようなものは主張をやめない。


「何か悲鳴の様に聞こえますけど…」

僕は恐る恐るそう言った。


すると壊さんは何かを考え出す。

その間にも悲鳴のようなものは響き渡って、遂には壊さんは観念した。


「2人は未来人じゃし…まあ良いかのぅ。付いてきてくれ」


僕と博士は壊さんに付いて行く形で部屋を出た。

長い廊下を渡り下へ続く階段を降りる。

それを何回か繰り返すと厳重に警備されてる部屋に辿り着いた。

ドアの前で見張ってる軍服を着た人が壊さんに敬礼をする。

そして壊さんの一声で見張ってた人や部屋に居た人が解散する。


僕らは部屋に入ってある光景に驚愕する。



「こ、これは……」


思わず声に出してしまった。

その部屋は大きな硝子で区切られていて、硝子の先には椅子があり生物が厳重に鎖などで拘束されていた。

その生物は人型をしていて、頭や腕、脚もある。

しかし全体的にグレーの色をしていて鎧でも着てるみたいに見えた。

でも鎧を着ているみたいにゴツい感じはなくヒョロッとした感じだった。



「昔コロリウイルスが蔓延したのを知っているな?そのウイルスを撒いた宇宙人だ」


壊さんは静かに告げた。


「ちょっと待ってください!何でそんな宇宙人がこんな所に……日本のこんな所に居るんですか!?普通はNASAとかで拘束されてるんじゃないんですか??」


戸惑いや興奮を隠す事が出来ず僕は声を荒げてしまう。

そんな僕を制する様に博士が口を開いた。


「イシスは、かいちゃんのひいお爺さんが作った組織なんじゃよ」


って事は、日本の組織だから日本に捕らえられていてもおかしくないのか…。

でも…



「ぎぎゃあああああぐげぇえええ」


僕はこの宇宙人が可哀想に見えてきた。

まるで{助けてくれ}と訴えてるように聞こえる。



「あの、、、こんな厳重に拘束する必要あるんでしょうか?」

僕は呟くように言った


「に、新月にいつくん!な、何を言ってるんだ!!?」

焦りを露わにしながら博士が言った


「でもこの宇宙人…なんか泣いてるみたいで可哀想ですよ……」


「泣いてる!?き、君にはそんな風に聞こえるのか!?」


「はい…僕は何だが可哀想で見てられません」


「い、いかん!早く出よう」

壊さんは慌ててそう言って、僕らを部屋から出す。

僕は部屋を出る前に壊さんや博士の目を盗んでを押した。



そして僕らは外に出た。

外に出ると壊さんと博士が何やら話をしていた。

僕らは元の世界へ帰るから別れの挨拶をしているんだろう。

博士からしたらもう二度と会えない筈の親友だったのだから積もる話もあるだろうし。


それから10分ぐらい経った時、話が終わったのかこちらに来た。


「壊さん、色々ありがとうございました!」


「いやいや、まだお礼を言われる段階じゃないよ。これから未来の為頑張るからの!」


「んじゃ、かいちゃん……またの。」


「おぉ!またのぅくらちゃん!」


こうして壊さんと僕らはお別れをした。


さて、次は時のカケラをこの時代の僕らに渡さないといけない。

壊さんの事は信用している、、けど万が一失敗したら地球は終わりだ。

なので保険が必要になる。

しかし、僕らはこの時代の僕らに会う事は出来ない。

同じ人間が同じ時空で会えば宇宙そのものが壊れると言われている。

実際に壊れるのかは分からないが、変な事はしない方がいいに越した事はない。



「どうします?博士」


「手紙を書いて時のカケラを渡そう。わしなら多分信じるじゃろ」


「そうですね!5年後隕石が落ちる事、この時のカケラを利用してタイムマシンが作れる事、色々書いて送りつけましょう!!」


「なんならラブレター風に書くか?!」

と、イタズラに笑う博士


「良いですね!シリアスが続いたので、ここら辺で休憩したいですもんね!」


こうして僕らはラブレターを書く事にした。

お互いノリノリだったから思ったよりすぐに書き終わった。


「それじゃ新月くん!読んでくれたまえ」


「えーごほん、、、拝見、倉永くらなが博士へ。こうして手紙を書くのは初めてなのですが、この想いをどうしても綴りたくてペンを走らせてます。

貴方を初めて見た時衝撃が走りました。こんな気持ちが私にあったのかと、驚きました。

それから抑える事が出来なくなりました。

私は貴方の事を……す…」


「ここで2枚目に行くわけじゃな」


「はい!そして2枚目でメテオインパクトの事や時のカケラの事を説明します!」


「ぷぷぷ。面白いのぅ」


「しかし博士。過去とは言え自分にこんなイタズラするのはどうなんでしょう?」


「ま、良いんじゃないの?」


「はぁ…他人事ですね」


そんな時だった。

{ピュー}と強い風がふいた。

その風のせいで、先程書いた手紙が飛ばされる。


「いかん!」

「あっ!」


瞬時に僕らは反応して飛んだ手紙をキャッチするも


{ビリリ}

お互い手紙を掴んで別方向に体重をかけたもんだから手紙が破れてしまった。



「ラブレターが破レター」

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