第2話 一つめの配達

「うわっ!」

 れた路面でタイヤがスリップした。危ない危ない。転んだりしたら大変だ。雨上がりの運転は気を付けなくては。僕は、運転に集中した。


 一軒目の配達先は、まだ新しいマンションだった。賃貸タイプのようだが、家賃はかなり高そうだ。

 僕は、箱からハートを取り出し、少し緊張しつつ玄関のベルを押す。

 配達先で、トラブルになりそうなハートの筆頭は、あまり温かくなく、軽すぎるものだ。丁度、今持っている、このハートみたいに。


 案の定、配達先の人は、訝しげな顔をして、こう言った。

「これ、何かの間違いじゃないかな?」


 まあ、こういう感じのハートの時は、だいたいこうなる。今まで何度か経験している。


「ちょっと、ちょっと、ねぇ、配達の人!」

「間違いじゃないの?」

「おかしいわ、こんなはずじゃないわ」


 こういう時、仕方がないので、僕はこう言う。

「発送元に電話をして、確認をとってみてください」


 そう言って、電話を手にした人々は、数分後に泣き出す。あるいは怒り出す。あるいは、なんというか、バツの悪い顔で帰っていいというジェスチャーをする。

 そういうとき、僕は、なんとか受領印だけもらって、何も言わず、なるべく目も合わさないようにして、そそくさと帰る。

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