第十三時限目

「さ、上がりなさい。伸斗、カバン持ってやれ」




「はいはい」




(このお父さんから霧島の顔が作られたのか…恐るべしDNA…)




「竹内?どうしたの?」




ボーッとしているあたしに、霧島君が顔を近付ける。




「何でも無いです…」



「本当?なら早く中に入ろうよ!」




「うん」




久しぶりに訪問した霧島君の家。




あたしは初めて訪れたかの様な気持ちでリビングへと足を運んだ。



「お邪魔します」




「あらっ!?」




(わっ…もしかして…)



キッチンの方から、霧島君にそっくりな女の人が驚いた様子であたしの顔を見た。




「母さん、この子伸斗の彼女らしいぞ?」




一番最後にリビングへやって来たお父さんが、ほくそ笑みながら霧島君のお母さんに話し始める。




(ちょっとパパさんっ…!誰がいつそんな会話をしたんだよっ!?)



「いやっ、あの…彼女では全然っ…」




「伸っ、そうなの!?」




お母さんが笑顔で霧島君の傍へ寄る。




「まだ彼女じゃないよ(笑)今日告白したけどね」




(この家、全部筒抜けだぁ…)




あたしは一瞬立ちくらみを感じながらも笑顔で首を横に振った。




「彼女じゃないですよ…(笑)」




「もしかして…貴方竹内結芽ちゃん?」




「は?…はい…」




「じゃぁ、未来のお嫁さんだぁ!」




(おいおい…)




「母さん、まずお茶かなんかを出してあげなさい」




「竹内、コーヒー飲める?」




「もう…大好きですよ…」




顔から性格全てがお母さん似の霧島君。




きっとお父さんの遺伝子は目の下にあるほくろ位…




「伸の部屋に運んであげるからゆっくりして行ってね!!」




(ここでじゃないのっ!?)




「竹内行こうっ!」




「…はい」




美女と野獣が住む大豪邸の家。




あたしはお父さんとお母さんの笑顔に見送られながら霧島君の部屋へと上がった。



「あれ…?霧島君の部屋変わったの?」




以前お邪魔した時、確か霧島君の部屋は今あたしが案内された部屋の隣だった。




殺風景なこの部屋にはテレビとテーブル、そして数え切れない程の漫画が置いてあるだけだった。




「あぁ…ここゲストルームにしたっ!部屋余ってるんだもん」




「あ、そう…あれ?モコの兄弟達は?」




「皆貰われてったよ!」




「そっかぁ…離れ離れだね」




あたしの頭の中に一瞬拓の顔がちらつく。




「とりあえず座って?」




「あ、うん」




綺麗な柄の絨毯に腰を下ろしたと同時に、霧島君のお母さんがやって来た。




「結芽ちゃんはコーヒーに砂糖入れる?」




「はい…あ、自分でやります」




「いいからいいからっ!あ、ねぇ?良かったら晩御飯食べて行ったら?」




(え゛…)




「それはいいですっ、それにすぐお邪魔するんで…」




「そう…今日は外食にしようと思ってたのに」



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