第十二時限目
この後、結局あたしは霧島君にソフトクリームをおごってもらい、なだめられた子供の様にソフトクリームを舐めながら空港の外へ出た。
「竹内はここからどうやって帰るの?」
沖縄との気温の差に体が反応したのか、霧島君がブレザーを羽織り出した。
「タクシーで帰る。ここから家まで歩いたら凄い距離だもんね」
「そっか!なら家の車に乗って行きなよっ!」
「え゛ぇっ!?いや、いいよっ!」
タカや菜緒、桂太君ならまだ分かる。
でも、告白された人の親が運転する車になんて…何を話したらいいのか分からない。
「あ、あたし車酔いするからタクシーでいいって」
「タクシーも車だよね?(笑)」
「霧島君家の車では吐けないよっ…」
「なんだそりゃ(笑)」
こんな会話で揉めていると、遠くの方から一台の乗用車が走って来てあたし達の前に横付けした。
「ほら、遠慮しないで乗りなよっ!」
「え…これ霧島君家の車…?」
あたしは目が点になった。
霧島君家の車は凄く高級感が溢れてて、まるで芸能人が乗っている様なベンツ車。
おまけに運転席には坊主なのか、あるいは単なるハゲなのか…
とにかく威圧感たっぷりの男の人が座っていた。
「き、霧島君…」
「何?」
「あたし…こんな車に吐けない…」
「大丈夫っ(笑)親父運転荒くないから」
(やっぱりお父さんなのっ…)
なかなか車に乗らないあたし達に痺れを切らしたのか、霧島君のお父さんが助手席の窓を開け、こう言った。
「伸斗、早く乗りなさい…その子も一緒か?」
「竹内を家まで乗せてってくれない?」
(だから勘弁してってば~)
お父さんの睨みを効かせた眼差しに、あたしは体がすくんで棒立ちになる。
「う゛っ…あ、あのっ…」
「竹内さん、君も早く乗りなさい」
「あ、でも…」
「あ!?」
(今っ…『あ!?』って言われちゃったよっ…)
「あ、親父怒ってないからね(笑)口調がこんな風なだけだからっ!ねっ、乗って!」
「…う、うん…お邪魔します…」
埃一つ落ちていない車。
我が家の車と違って、ドアを開ける時に奇妙な音なんてしない。
「竹内さん」
「…へ?あっ、はいはいっ!」
「少し家に上がって行ったらどうだ?」
(何を言っちゃってるんですかっ…)
「そうだね!そうしなよ竹内っ!」
極道みたいなお父さん。
とても断れる状況では無い…
「…じゃぁ、少しだけ…」
(緊張しすぎて吐き気通り越したっての…)
生徒がまだ外で旅行の余韻に浸っている中、あたしは今から罰を受ける為に連行される容疑者の様に、背中を丸め体を小さくしながら霧島家へと向かった。
車で約15分。
あたしはちょっときつめの芳香剤に酔いながらも、霧島君の家に到着した。
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