第十一時限目

次の日。




拓に彼女が出来た事を知ったタカを含め、他の生徒はその話題で持ちきり。




他のクラスの子で、まだあたしと拓が付き合っているものだと勘違いしていた人達は、次々とあたしに聞きあさり、そしてあたしはそれを丁寧に否定し続けた。




そして飛行機に乗り、2泊3日の修学旅行は終了。




福島空港のロビーに着き、主任からの連絡事項の後、あたし達は全員解散した。




「結芽…」




タカが後ろからあたしのブレザーを引っ張る。




「何!?あ、ねぇ、寒くない?沖縄と同じ服装でいたら風邪引いちゃうよね(笑)」




「…無理して笑う事無いんだよ?」




「へ?何で?」




「昨日だって…本当は部屋に居るの辛かったんじゃない?」




タカが目に涙を溢れさせながらあたしを見る。




(あたし…今度はタカを泣かせちゃうのか…)




「本当に平気だよ(笑)…ってかほらっ、彼氏待ってるよ!?一緒に帰るんじゃないの?」



「え…?あ、うん…」



「あたしといると暗い影が移るよ(笑)ほらほら、可愛い子には旅をさせろ…だっけ?」




「結芽…」




その時、誰かがあたしの頭をつついた。




「わっ…」




「タカちゃん、竹内は俺に任せてっ!」




「霧島君っ!」




床に置いていたバックを背負い、霧島君があたしの腕を掴んだ。




「あ…じゃぁ霧島君にお願いするね?」




「はいは~い!ラブラブしておいで~」




「結芽、また学校でね」




「う、うん…」




タカが小走りで彼氏の元へ消え、あたしは霧島君に連れられ歩き出す。




「ちょっと何するの!?」




「ソフトクリーム買ってあげる!」




「はぁっ!?」




桂太君と菜緒の視線を浴び、あたしはダダをこねて無理矢理引っ張られている子供の様に霧島君の後を歩く。



「いらないよっ!あたし帰る!」




「遠慮しないでさっ」



「いいってば!」




あたしはバックを奪い、出口へと歩く。




「竹内っ」




「何!?」




霧島君がいる後ろを振り向いた時




その背後から拓と彼女が向かって来るのが見えた。




「ほ、…本当に帰るっ」




「何で!?」




「何でって…」




そして、拓と彼女があたし達の横を通り過ぎた時…




霧島君があたしの手を強く握った。




「なっ…!!」




「竹内、今フリーだよね?」




(拓に聞こえる…)




「知らなっ…」




「俺と今から付き合おうよ。絶対幸せにするから」




「は…」




「いいよね松澤?お前彼女いるもんね?」




(辞めて…)




霧島君の言葉に、拓は立ち止まらずにこう言った。




「知らね…俺に聞くなよ」




拓の彼女があたしを睨む。



(今の一言は辛いなぁ…)




どんなに自分に念じてみても




どんなに自分を悪者にしようとしてみても




拓への気持ちは少しも減ろうとしてくれない…




「前に言ったよね?人の気持ちは変わるって」




「……」




「少しずつでいいから…俺の事考えて欲しいんだ」




「……」






時間と一緒にあたしの拓への想いは消えて行くのだろうか




あたしは、きっとまた同じ事を繰り返そうとしてるのではないか…



ユッキにした事を霧島君にも…




「少し…考えさせて」



「勿論」




「気持ちは変わらないかもしれないよ?」




「でも変わるかもしれないよね?」






拓を忘れたい




拓を心の隅で想い続けていたい…




そんな葛藤が天秤に架けられ、あたしの頭の中で右往左往していた。


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