第九時限目
「そうなっても仕方ないよ!」
「良くないっ!」
菜緒があたしの両手を掴む。
「結芽っ、いい!?あたしと桂太はまだあんた達が別れた事認めてないんだからっ!」
「そうだよ結芽ちゃんっ!もう一回ちゃんと話し合おう!?」
無言でうつ向くあたしの携帯が震える。
「竹内、携帯が…」
「知ってる、タカから」
「結芽ちゃん、とりあえず行こうよ」
「でもっ…」
「結芽っ!」
行くべきか
それとも黙って部屋に戻るべきか…
どちらの選択が正しいのか、あたしには分からなかった。
(拓とはもう一度ちゃんと話がしたい…でも今あたしが行って止める権利はあるの?)
「菜緒…あたしどうしたらいいか…」
菜緒に言い掛けたその時だった。
「あ、拓…」
(え…?)
桂太君があたしの後ろを見ながら言った。
「よぉ…」
(拓の声だ)
あたしは拓の声に反応し、ゆっくりと後ろを振り返った。
(…あ…)
あたしの目に飛び込んで来たもの…
それは女の子と手を繋ぐ拓の姿だった。
「ゆ、結芽…」
菜緒があたしの名前を呼ぶ。
「拓、お前…付き合うの?」
「あぁ」
嬉しそうに拓と手を絡ませる女の子。
話た事は無いけど顔は知ってる…多分他の科の子…
「お前っ、ちょっと来い!」
桂太君が拓の腕を引っ張った。
(さすがにこの光景は辛い…)
「…あたし帰んなきゃっ!あ、拓良かったねぇ~修学旅行でまたカップル成立だよ!じゃぁねっ!」
「結芽っ!」
「結芽ちゃんっ!」
楽しい思い出を作るはずの修学旅行。
(またあたしだけが立ち止まったままだったんだ…)
あたしは泣き叫びたい気持ちを抑え、ただひたすら階段を走り降りた。
「結芽待って!」
後ろを振り返る事無く走り去るあたしの後を、菜緒が必死で追い掛けて来た。
「嫌だっ!今日はもうほっといて!!」
「結芽ごめんねっ!?」
「何で菜緒が謝るの!?」
「だってっ…!!」
下の階に着き、あたしは立ち止まって後ろを振り向いた。
「ごめんねっ…今まで色々して貰ったのにっ…」
「別にそんなっ…」
「綺麗さっぱり忘れるからっ、あたし彼女持ちの人興味無いしっ…」
「結芽っ…」
菜緒があたしの頭を触ろうとした時、あたしは無意識にその手を思い切り振り払ってしまった。
「結芽…」
「ご、ごめんっ…あの…」
「……」
「菜緒あの今のはっ…」
「…あたしと桂太…結芽にとって目障りかな?」
菜緒の後ろから階段を降りて来る足音が聞こえる。
「…桂太君」
桂太君が静かに菜緒の傍へと歩き、ポンと頭に手を乗せた。
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