第七時限目

その後、夕食を済ませたあたし達は大浴場にて今日1日の汗を流し、そして夜…




タカにとって一世一代の大イベントが始まろうとしていた。






夜9時…




ドキドキの消灯時間が訪れた。




「タカっ、頑張って告白されてね!」




あたしは鼻息を荒くしながらタカへエールを贈る。




「…やっぱりあたしが出てくよ~…」




「何言ってんの!先生に見つかったら台無しでしょ!」




「だって…」




そう。




昨夜は大体消灯時間から1時間後位に女の先生が見回りに来た。




今は9時過ぎ…




10時前位までに戻れば多分見つかる事は無いだろう…





「終わったら電話して!」




「うん…」




「じゃぁねっ!」




あたしは久しぶりにバックから携帯を取り出し、他の子達と一斉に部屋を出た。




廊下には既にタカの想い人と思われる人が待機しており、あたし達はとりあえず隣りの部屋へ突撃する事にした。



「お邪魔しまーす」




隣の部屋は同じクラスの子達。




「ちょっとだけここに居させてね?」




「全然いーよっ!」




あたしは壁に耳を引っ付けたい気持ちを抑え、1人ベランダで夜風に当たる事にした。




「あ~ぁ…あと1週間位はいたいなぁ…」




こんな綺麗な夜景とも今日でお別れ。




簡単に来れる距離じゃ無いだけに、あたしは余計寂しく感じた。




「暇だな…菜緒にメールでもしてみるか」




ジャージのポケットから携帯を取り出し、ディスプレイ画面を開く。




(あれ…着信アリだって…タカかな?)




ボタンを押し、確認してみるとそれは全然知らない番号からであった。




「夕方だ…誰だろ、悪戯かな」




そう思い、菜緒にメールを打とうとした時1件のメールが受信された。




(誰だ?お母さんかな?)




受信ボックスを開き、内容を確認する。




「霧島君だ…」



《部屋の前にいるんだけど出れる?》




(…部屋?)




「え゛っ!!部屋っ!?」




あたしは慌ててベランダを出て廊下へと走った。




「結芽何処行くのっ!?」




「あ、トイレっ!」




「トイレなら部屋にあるじゃん!」




「えっ?あ、そこのトイレじゃ収まらないから!」




(何がだよ…)




自分でも意味不明な発言だと分かる台詞を友達に投げ捨て、あたしは扉を開けた。




「こんばんはっ!…ってあれ?竹内の部屋ってこっちだよね?」




霧島君が隣の部屋を指さす。




「あ、そこは今立ち入り禁止区域だから!」



「…あぁ(笑)タカちゃんでしょ?」




「何で知ってるの!?」




ごくわずかの人にしか知られていないと思っていたあたしはびっくり。




「あたし誰にも言ってないよ!?」




「男の方が皆にばらしてたよっ(笑)」




「おいおい…」



(これで万が一タカに振られたらどうするんだろう…まぁ、振る事は無いだろうけど)




今日まで誰にも悟られない様にと気を張り詰めて来たあたしの苦労は水の泡…




「で?霧島君はどうしたの?」




「旅行最終日だから少し話そうかな~って」



「いつも学校で一杯話してるよ?(笑)」




「それとこれとは別でしょ~!!」




そう言い、霧島君は笑いながらあたしの腕を掴み歩き出した。




「えっ、ど、何処に行くの!?」




「自動販売機っ!!好きなの買ってあげるっ」




「で、でももうすぐ先生の見回り来ちゃうよ!?」




「1人や2人居なくたって暗闇じゃ分かんないってば!(笑)」




(タカから連絡来るんだけどなぁ…)




自動販売機が置いてある場所は1階のロビー付近。




行ってジュースを買って貰い、はいさよならってな訳にはいかない…




(見つかったらどんな処罰なんだろう…)




多少ビクビクしながらも、あたしはとりあえず霧島君の後に続いた。


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