第六時限目
「霧島君は確かに猪みたいな人だよね」
「えっ!?い、猪!?」
タカが身を乗り出してあたしに聞いた。
「あ、ほら、ストレートだなって…」
「でも、霧島君は誰にでも気遣いが上手い訳じゃないでしょ?」
「う~ん…」
「…ごめんね、余計悩ませて」
その時、あたし達の後ろからガラスがコンコンと鳴る音がした。
「ん?」
あたしとタカは同時に振り向く。
「結芽、タカ、夕飯だって!!」
「あ、そっか。結芽ごめんね、行こっ」
ガラス越しから同部屋の子達に夕飯の知らせを受け、タカが少し寂しげな表情でベランダから部屋へと足を踏み入れた。
(タカ…)
「あ、待って!!」
「え?」
何を思ったのか、とっさにタカの腕を掴んでしまったあたし。
「結芽どうしたの?」
「え…、あ、あの―…」
「何?(笑)」
(何て言ったらいいんだろう…)
「拓の事は、言える日が来たらちゃんと話すから…それに霧島君の事も…自分なりに考えてみる」
(ごめんね、今はこれ位しか言えない…)
あたしはうつ向いていた顔を上げ、タカを見た。
「あ、曖昧な言い方で…ごめんね?」
「……」
「あれ?タカ…さん?」
「…ぷっ(笑)」
気分を悪くさせてしまったと顔を引きつらせるあたしを見て、突然タカが吹き出した。
「な、何っ!?」
「何無理してんのっ!」
「へ?別に無理なんてっ…」
「結局は結芽が決める事なんだから、あたしは背中を押すだけだよっ」
「…うん」
「ほらっ、ご飯食べに行こうよっ!多分あたし達一番最後だよ!?」
(ありがと、タカ…)
あたしは友達に本当恵まれている。
でも、それはあたしがこんなにも頼りないからただ単に放っておけないだけなのかもしれない…
(ご飯食べて力つけるかっ)
「よしっ、ダッシュで行こっ!!」
あたしは手にしていたジュースを飲みながら、ベランダを後にしようとしたその時…
「結っ…」
ゴンッ…
「ぅぐっ…」
バカ丸出し。
あたしは開かれていない窓へ突進して行った。
「結芽っ…大丈夫っ!?」
「…このガラス綺麗すぎるっ」
「初めて見た…本当にいるんだね(笑)」
タカは窓に体を預けながら大笑い。
「皆が居なくて良かったよ…さ、行こう…」
ペットボトルを口に含んでいた為、幸い直接な被害は無かったもののペットボトルが喉の奥まで入り込み、正直吐くかと思った。
(タカは…ってか普通はこんな事しないよな…)
夕飯の集合時間から数分が経過。
掛け足で向かったあたしとタカは、無駄に体力を使ったせいか男子に負けない位の食べっぷりを発揮した。
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