第四時限目

「このアホ結芽っ!まともな会話してないじゃん!」




「ご、ごめん…でも用件は分かったよ!明日タカを部屋に監禁すればいいんだよね!?」



「監禁でも軟禁でもいいからさ…頼んだからね!!」




「分かった!タカに言っとくね!」




「結芽ちゃん…」




桂太君がお盆を頭に乗せながらあたしに言う。



「俺…全然飯食ってないんだけど…」




「そうなのっ!?あたしてっきり…」




「桂太、じゃ夜にあたしとコンビニ行こ!すぐ近くにあったから」




「沖縄来てコンビニかよ…まぁいいや、じゃ結芽ちゃんまたね」




「ご、ごめんねっ…」




その後、部屋に戻ったあたしはタカに菜緒からの伝言を伝え、同じ部屋の子にも承諾を得た。




そして消灯。




あたしは布団に潜りながら1人ニヤニヤしていた。




(拓…明日も話してくれるかなぁ)




暖かくて海が綺麗で…



まるで楽園の様な沖縄。




この時、あたしはこの旅行を楽しく過ごせると勝手に思い込んでいた。



翌朝。





朝食を済ませたあたし達は、昨日に引き続き見学へと出発した。




遊覧船の様な物に乗り込み、同じ日本とは思えない程綺麗な海の上を走る。




2日目は特に晴天で、11月にも関わらず長袖のワイシャツが蒸し暑い位だった。




陸から眺める海は透明で真っ青で…




ゴミのポイ捨て等で汚れ果てた海しか見た事が無かったあたしには、本当に夢の島の様に思えた。




でも、そんな夢の島にも昔は残酷すぎる過去があったのを、あたしは修学旅行前に1つのあるビデオで知った。



『ひめゆりの塔』




集団自決やアメリカからの爆撃…




いつもはビデオ鑑賞なんて言ったらお遊び時間となるうちのクラス。




でも、この時だけは皆一言も話す事無く俳優が演じる実際に起こっていた物語りに釘付けだった。




そして、本日の全体行動最後場所…




あたし達はひめゆり記念館へと足を運んだ。



展示してある一枚一枚の写真…



生徒を初め、先生達までもが言葉を失っている様だった。




戦争に翻弄された少女達の悲しい足跡は想像以上に辛いもので、今のこの時代がどれだけ幸せなのかをあたしは痛感した。






全体での見学が終わり、午後からは自由行動。




あたしは旅行前に決めたタカを含む4人と、沖縄名物巡りを堪能しまくった。




目に映るもの全てが珍しく、大目にお金を持ってきたあたしは『沖縄名物』と書かれてある食べ物をひたすら購入した。




本当なら、この自由行動は拓と予定していたあたし。




行ける範囲は決まっている為、観光を楽しみながらもあたしの目はいつも拓の姿を追い続けたまま。




でも、色んな高校が修学旅行に来ている中でさすがに見つける事は出来ず、あたしは複雑な気持ちで自由行動を終えた。






そして夕方。




ホテルに戻ったあたし達は各自部屋で一休みをしていた。






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